研究課題/領域番号 |
26462879
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩見 行晃 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招へい教員 (90303982)
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研究分担者 |
林 美加子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40271027)
山本 洋子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招へい教員 (60448107)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脱灰 / フッ素 / PIXE/PIGE |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、根面象牙質の耐酸性獲得や再石灰化メカニズムを分子レベルや元素レベルで解明することであり,そのためには、う蝕によるミネラルの変化を把握することが必要となる。一般にミネラルのみの変化量は、transvers microradiography(TMR)を用いて評価されてきたが,申請者らは、従来から開発してきた定量二次元元素分析法であるIn-air micro-PIXE/PIGE測定法(以下、本測定法)で、脱灰負荷をかけた時のミネラルの主成分であるカルシウムの変化により、う蝕の評価が可能かどうかを検討し、同時にう蝕抑制に関与していると考えられているフッ素の動向も併せて検討した。 ヒト抜去歯根面象牙質にフッ素徐放性各種歯科材料を塗布して、脱灰前後のカルシウム、フッ素濃度の変化を測定したところ、フッ素が浸透した歯質のカルシウム喪失量は何も塗布されていない根面歯質と比較して有意に少なかった。また、TMRと同様にカルシウム喪失の形状も併せて、本測定法でう蝕の評価が可能であり、歯質に浸透したフッ素は脱灰されても拡散することなく歯質に深く浸透していることが、カルシウムの動きと同時に定量的に解明された。以上のことから、本測定法は、カルシウムとフッ素の動向を同時に定量測定でき、う蝕を元素レベルで解明するにはTMRより簡便で有効な測定法であることが示唆された。 本測定法と、従来からのTMR、新たなマイクロCTによる脱灰評価との関連性も現在分析中であり、フッ素濃度の高低による影響も現在測定中である。さらに、う蝕部位の中で示される高濃度のカルシウムは再石灰化によるものか、あるいは高い耐酸性を持つことによるものかなどは今後の検討課題であり、歯科材料から徐放されるフッ素濃度量と脱灰抑制の定量的解明も今後行う予定である。 平成26年度の成果は、国際学会で一部発表しており、雑誌(NIMB,348,152-155, 2015)にも掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若狭湾エネルギー研究センター、および日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所(TIARA)でのマシンタイムも申請に応じた日数が得られ、おおむね順調に進展している。また、その成果の一部は当初予定していなかったが、国際学会でも発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
若狭湾エネルギー研究センターおよびTIARAでのマシンタイムも前期分はすでに確定しており、測定も実施されるので、当初の研究計画に変更はない。試料作製を引き続き行い、測定日に対応して準備している。マイクロCT 、さらに臨床的評価も併せて行う予定をしている。 これまでに得られた成果は本年6月の国内学会で発表予定であり、投稿論文も作成中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定ではデータ解析用のノートパソコンを購入予定であったが、現有備品による別のデータ解析を先行したため次年度に購入を延期した。また、購入を予定していた物品の一部は、現有物品の使用で賄えたため、購入を次年度以降に延期し、その一部で当初予定していなかった国際学会での成果発表費用の支出が可能になった。
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次年度使用額の使用計画 |
若狭湾エネルギー研究センターの測定は続行が決定しており、予定通りの研究を実施するため旅費および試料作製費などを計上する。現有消耗品は残りが少なく、新たな試料作製のための材料や器具が必要である。また、本研究における測定は大阪大学ではできないので、特に若狭湾エネルギー研究センターへの旅費計上は不可欠である。加えて、研究続行に有益な最新の情報の収集や成果発表のための日本歯科保存学会、日本歯科理工学会への出張旅費を計上した。
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