研究課題/領域番号 |
26462884
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小河 達之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助手 (10346421)
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研究分担者 |
吉原 久美子 岡山大学, 大学病院, 助教 (90631581)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯質接着材料 / ボンディング材 / コンポジットレジン / シランカップリング材 / フィラー |
研究実績の概要 |
接着性レジンは、審美的にも優れ、歯質の侵襲を最小限に抑えた治療が可能なため、臨床で汎用されている。しかし、長期の耐久性を考えると、いまだ十分な材料とは言い難くその解決策が求められている。申請者は、これまでに世界に先駆けて行ってきた、化学分析手法とナノレベルでの界面分析手法を応用し、長期耐久性に優れた、歯質接着材料の開発のための基礎的な知見を得ることを目的として研究を行った。 本年の研究では、従来の歯科材料の劣化に関して評価を行った。ボンディング材の評価では、スコッチボンドユニバーサルボンド(3M ESPE)、クリアフィルユニバーサルボンド(クラレノリタケデンタル)を歯質との接着後、界面部分を幅1mmの厚みにスライスし、半分をすぐに透過電子顕微鏡観察用に包埋し、残りの半分をサーマルサイクル10万回負荷かけた後に包埋した。直後のサンプルでは、いずれのボンディング材でもフィラーが一様にボンディング層中に観察されたのに対して、サーマルサイクル後のサンプルでは象牙質界面付近のフィラーが抜け落ちているのが観察された。現在、その原因については詳細な分析を行っている。さらに、材料中に水を含まず、フィラーの含有量が多いコンポジットレジンの劣化の評価も行った。5種類のコンポジットレジンを直径1mmの円柱の棒状の試験片を作製し、直後と水中に1年間保管したものの引っ張り強度を評価した。コンポジットレジンの種類によって、1年間保管しても強度が変化のないものもある一方、優位に強度が低下したものもあった。破断面の走査電子顕微鏡観察を行ったところ、わずかに破断面のフィラーの状態が異なることが観察されたが、十分な解明にはいたらなかった。そのため、現在破断面のさらに断面観察をおこなうように、準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに歯科レジン材料(ボンディング材、コンポジットレジン)の劣化について、とくにフィラーの劣化については研究されていない。本研究により、フィラーのとくにシランカップリング処理が劣化に影響していることが示唆された。コンポジットの劣化に関してはすでに学会発表を行い、現在論文投稿準備中である。 ボンディング材の劣化については、現在引き続き行っている実験も含め、今年度中に学会発表を予定しており、その後論文投稿準備を行うことにしている。 また、フィラーのシランカップリング材が劣化に影響していることがわかったため、現在、異なるフィラーの表面処理方法を行ったボンディング材の劣化について検討するための試料作製などを行っており、おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ボンディング材、コンポジットレジンの劣化の微細構造観察 現在までに透過電子顕微鏡などを用いた劣化のナノレベルの観察は行われていない。そこで、現在得られているフィラーの劣化が認められた材料について、ナノレベルでの観察を行い、劣化のメカニズムに関してナノレベルでの解明を行う。 2)フィラーの表面処理を変えたボンディング材の劣化への影響を検討 フィラーの表面処理を変えたボンディング材を試作する。象牙質に塗布し、透過電子顕微鏡観察用のサンプル用にサンプルを1mmの厚さに切断後、長期水中保管する。その後、透過電子顕微鏡観察用に薄切し、フィラーの状態を観察する。 今年度は、上記1)と2)を主に行う。得られた結果は歯科保存学会もしくは接着歯学会などで発表する。また、昨年度得られた結果に関しては、論文執筆中であり、できるだけ早めにDental Materialsに投稿予定にしている。
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