研究実績の概要 |
高周波/電磁波治療を深在性齲蝕そして初期歯髄炎へ応用するにあたり、高周波/電磁波の生体に対する効果と影響、そして病因と病態、特に歯髄炎のpathogenesisを解明する必要がある。高周波/電磁波治療はジュール熱を発生するため殺菌作用とともに組織為害作用があると考えられるが、その作用範囲は非常に狭く、少し離れたところでは生体の細胞、とくに硬組織形成細胞の活性化を促進することを見出し、さらにこれはERK1/2およびp38 MAPK経路を通じて作用を発揮することを報告した(Cell Physuol Biochem, 35, 2015)。しかし、研究の当初に予想していた象牙細管内細菌殺菌および静菌効果については、それほどの作用は示さず、さらなる出力および照射条件の探索が求められる結果となった。 歯髄炎の初期病態の解明については大きな前進があった。歯髄炎の発症には歯髄の自然免疫機構が関与していると考えられるが、未だに未解明である。今回、歯髄細胞がインターフェロン-γを通じてケモカイン(CXCL10)産生やIL-6産生、さらにインドールアミン2,3デオキシゲナーゼの産生を誘導することを見出した(J Endod, 40, 2014)。さらに、ヒト歯髄細胞が炎症によって産生するVEGFおよびCOX-2がカテキンにより抑制されることを見出した(Int EndodJ, 48, 2015)。また、深在性齲蝕では菌体成分が象牙芽細胞に作用し起炎すると考えられるが、自然免疫機構で重要な働きをするパターン認識受容体であるNOD1が象牙芽細胞に存在し、菌体成分と結合することにより、IL-8やCCL20などのケモカインを産生することを明らかとした(BioMed Res Int, 2016)。今後、これらに対する高周波/電磁波の生体に対する効果を検討して行く予定である。
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