研究課題/領域番号 |
26462888
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
久保 至誠 長崎大学, 病院(歯学系), 准教授 (80145268)
|
研究分担者 |
木村 泰男 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (30253686)
林田 秀明 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (20238140)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 根面う蝕 / 予防 / 進行抑制 / ランダム化比較試験 / フッ素 / 歯磨剤 |
研究実績の概要 |
1.根面う蝕の予防に関するランダム化比較試験(パイロットスタディ)のUMIN登録:平成26年度末に倫理審査委員会に承認された当該臨床試験を平成27年度早々にUMINに登録した(UMIN000017211)。介入開始までの準備期間を半年に設定し、情報公開日を2015/10/01とした。 2.研究協力者のリクルート:長崎大学病院総合歯科診療部において定期管理を行っている患者で、頬・唇側あるいは舌・口蓋側に露出根面を少なくとも1歯以上有する者が臨床試験の適格者であり、研究目的・計画等の概要の説明を受け、協力の内諾を口頭で得られた者を研究対象候補者とした。この候補者の中からランダムに20名抽出して研究協力者になって頂く計画であったが、9月に研修歯科医と指導医に候補者のリストアップを依頼してもゼロ回答であった。そこで、遅くとも平成28年度に臨床試験を開始できるよう問題の解決に努めた。 3.う蝕治療ガイドライン第2版の出版:第1版の発行(文献検索日2009年1月14日)から5年経過したので、アップデート作業に本格的に取り組んだ。「初期根面う蝕に対してフッ化物を用いた非侵襲的治療は有効か」というクリカルクエスチョンに関しては、採用論文を1件追加し(文献検索日2013年11月12日)、第2版を上梓した。さらに、第3版に向け、2016年3月に文献検索と抽出作業を行った。 4.第62回ヨーロッパう蝕学会(ORCA)への参加:根面う蝕に関する研究先進国の動向と情報収集を行った。特に、日本ヘルスケア歯科学会代表杉山精一先生と情報交換し、親交を深めた。 5.日本ヘルスケア歯科学会での講演:歯科疾患を未然に防ぎ、生涯にわたって健康な歯列を維持できるような歯科医療を目指している日本ヘルスケア歯科学会の評議員に対する講演依頼があり、「根面う蝕に関する現状と今後の課題」と題して、これまでの成果を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
長崎大学病院総合歯科診療部において定期管理を行っている患者で、臨床試験の適格条件を満たし、研究概要の説明を受けて協力の内諾を口頭で得られた者を研究対象候補者とした。 本研究課題が科学研究費助成事業に採択された平成26年度、研究代表者および分担者が所属する診療科が研修医診療室から総合歯科診療部に改組された。このため、26年度から27年度にかけてスタッフの半数以上に退職や異動が生じた。特に、多くのメインテナンス患者を長く担当していた歯周病専門医が平成27年3月に退職した影響が大きかった。また、診療体制や研修歯科医師の指導体制も変更された。さらに、従来1年であった研修歯科医師の総合診療部での研修期間が26年度より半年に短縮され、定期管理している患者を2~3回しか診ることができず、指導医を含め口腔内の状態の把握や患者との信頼関係構築が十分にできていなかった。したがって、候補者のリストアップを指導医と研修医に依頼しても協力が得られなかった。 研究代表者には長年にわたって定期管理している患者(平均年齢69歳)が100名程度いる。しかし、臨床試験の適格者が予想以上に少なかったことと研修医の指導で時間的に余裕がなかったため、この中から充分な数の候補者を選出できなかった。 上記の理由で、本年度内に臨床試験を開始できず、研究の進み具合に大幅な遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
既に記したように、総合歯科診療部になってからの、研修プログラム、指導体制、患者管理責任体制が研究対象候補者リクルートの障害になっていることが明らかになった。3年目を迎え人事も落ち着きそうな平成28年度から、総合歯科診療部の患者を指導医に配当し、主治医として責任が明確になるようにした。こうすることで、患者の口腔内状態は言うに及ばず患者背景の把握に飛躍的な改善が期待できる。さらに、歯科医師としての総合的なスキルアップと患者に対する医療人としての責任感、倫理観の涵養を企図し、総合歯科診療部における研修期間も1年に戻すことにした。 4月の新研修歯科医師に対するオリエンテーション期間中より、指導医と研修歯科医師に対して臨床研究の概要説明と協力依頼を繰り返すことで、研究対象候補者リストアップの促進を図る。 研究分担者であった科学研究基盤研究(A) が平成27年度で終了したので、本研究に割く時間を増やす(エフォートを25~30%に引き上げる)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床試験を開始できなかったので、歯磨剤、歯ブラシ、唾液検査キット、医療器材等の経費を消費することなく、学術助成基金助成金に未使用額が発生した。 また、臨床試験の成果が得られなかったので、研究組織挙げての学会発表ができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
プールされた候補者からランダムに抽出して再度研究目的等を説明し、自由意思のもと書面で同意が得られた20名を研究対象者とする。臨床試験を開始して、歯磨剤に配合されているフッ素の根面う蝕の予防効果に検討を加える。研究開始が当初計画より遅れたため、学術助成金による研究期間が終了しても、必要に応じて臨床研究を継続する。さらに、試験法が妥当と判断された時点で研究対象者を追加し、必要なサンプルサイズにする。また、根面う蝕の進行抑制に関しても、研究対象候補者の予備調査を研究期間内に行う。このため、臨床試験で用いる消耗品等を備蓄する。 第63回ヨーロッパう蝕学会に参加し、根面う蝕の予防ならびに初期活動性根面う蝕の進行抑制に関する研究動向調査、情報交換・収集を行う。さらに、う蝕治療ガイドライン作成小委員会(日本歯科保存学会内設置)の委員として、根面う蝕のガイドライン作成作業に従事する。
|