研究実績の概要 |
現在,歯髄保存療法剤として水酸化カルシウム製剤を使用して,露髄面に硬組織形成を促進させる直接覆髄法が広く行われている.しかし,その高いアルカリ性のため生体局所での炎症反応や形成された被蓋象牙質の質や形成に要する期間などを考慮すると,改善点は多い.一方,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)は,悪性腫瘍に対する分子標的薬剤として用いられているが,近年,骨芽細胞の骨形成を促進し,破骨細胞の分化を著しく阻害することが報告されている. 本年度は,エピジェネティックス修飾に関わるHDACiの象牙芽細胞前駆細胞に対する分化誘導について昨年度の研究からHDACi(MS-275 1 nM, VPA 1 mM, TSA 100 nM, 1 mM)によって遺伝子の比較的発現があったBMP-4およびBMP-6遺伝子に対してChIP(クロマチン沈降)法を行った.Acethyl-Histone H3抗体およびAcethyl-Histone H4抗体を用いた.ChIPで得られたサンプルをReal-time PCRを用い,BMP-4およびBMP-6の-200,-100,+100,+200の領域についてそれぞれPCRプライマーを作成し,ヒストンのアセチル化の解析を行った。Cq値より得られたInput%を比較した結果,Acethyl-Histone H3抗体でChIPを行った,TSA群のBMP-4 -100領域にコントロールと比較して優位なInput%差を認めた.以上の結果から,TSA 100 nMにてBMP-4遺伝子の発現上昇が認められたこと,アリザリン染色でも染色されていたことから,とくに歯髄の再石灰への関与が推察された.
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