研究課題/領域番号 |
26462894
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
しま田 みゆき 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (60297348)
|
研究分担者 |
渋川 義幸 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (30276969)
佐藤 正樹 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (80598855)
木村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90582346)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 歯内治療薬 / TRP channels / Odontoblasts / Guaiacol / Trigeminal ganglion |
研究実績の概要 |
近年、象牙芽細胞が感覚受容細胞であることが明らかになっている。これにはTRPチャネルが関与することが知られているが、その中でTRPV1チャネルはカプサイシンの受容体タンパク質である。歯内療法薬として使用されるフェノール系薬剤がカプサイシンと同じフェノール骨格を有することから、フェノール系薬剤の一つであるグアヤコールに着目し、マウス由来の象牙芽細胞系細胞(odontoblast lineage cells:OLCs)のTRPチャネルに対する作用をカルシウムイメージング法で解析してきた。これまでに、グアヤコールは、象牙芽細胞のTRPV1、TRPV2、TRPV4チャネルではなく、TRPV3チャネルを介して細胞外から細胞内へCa2+を流入させる働きがあることが判明した。また、200 mOsm/Lの低浸透圧刺激をOLCsに加えると細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)が増加するが、この低浸透圧刺激誘発性 [Ca2+]iの増加は、グアヤコールによって抑制されなかったことから、グアヤコールの象牙質痛に対する鎮痛効果は低いと考えられた。そこで、グアヤコールの歯髄に対する作用を検討した。Wistar ratから急性単離して得られた三叉神経節ニューロンに10 nM bradykininを投与すると[Ca2+]iが増加した。bradykinin誘発性[Ca2+]iの増加は、グアヤコールを同時投与すると有意に減少した。さらに、ガラス微小管をつけたマニピュレーターで三叉神経節ニューロンに直接機械刺激を加えると[Ca2+]iが増加したが、グアヤコール投与下では、この[Ca2+]i増加の減少がみられた。また、グアヤコールはこの機械刺激による[Ca2+]i増加を濃度依存的に抑制した。従って、グアヤコールの歯痛に対する鎮痛効果は象牙芽細胞に対してではなく、直接歯髄に作用し発揮されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェノール系の歯内治療薬の象牙芽細胞に対する作用を解明するため、その1つであるグアヤコールに着目して研究を進めてきたが、研究結果からグアヤコールの象牙芽細胞に対する鎮痛効果は低いと考えられ、別な視点からこの薬剤の歯痛に対する鎮痛効果を検討する必要性が生じた。そのため、実験の方向性が変わり、象牙芽細胞ではなく三叉神経節ニューロンに対する実験を行うことになった。当初、予定していたその他の歯内治療薬についての検討はできなかった。また、現在、論文作成中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度行った実験から、グアヤコールによる三叉神経節ニューロンにおける機械刺激誘発性[Ca2+]i増加の抑制が明らかとなった。その結果も踏まえ、グアヤコールが象牙芽細胞ではなく歯髄に直接作用する薬剤であることについて論文をまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在、実験データをまとめて論文作成中であるが、三叉神経節ニューロンに対するグアヤコールの作用を検討するため、本年度は追実験が必要となった。それによって研究の遅れが生じ論文完成には至らず、補助事業期間延長を希望した。そのため、投稿等に使用する予定であった研究費補助金が未使用となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度未使用の研究費補助金は論文作成に使用したいと考えている。また、その過程で追実験が必要となった場合にはその経費として実験に使用する可能性がある。
|