研究実績の概要 |
本研究では, 新規に確立したマウスES細胞およびiPS細胞由来高純度象牙芽細胞の培養後に界面活性剤を灌流して, 象牙芽細胞由来の脱細胞化した細胞外マトリックス(象牙芽細胞擬態マトリックス)を作成し, マウスES細胞およびiPS細胞を用いて歯髄組織の再細胞化の効率と適正条件を生化学的手法を用いて基礎的検討を行う. さらに, ラットを用いたin vivoにおいて, 摘出した歯を基盤鋳型として, 再細胞化した歯髄組織の再生を観察することで, 従来の歯髄保存治療であるう蝕治療法や覆髄法に代わる新規な歯髄再生モデルを構築することを研究目的とする. 平成27年度の具体的到達目標は, 象牙芽細胞擬態マトリックスとマウスES細胞およびiPS細胞を用いた歯髄組織への分化メカニズムについて, 生化学的手法を用いて基礎的検討を行うことであり, 以下の結果を得た. 1, 象牙芽細胞擬態マトリックスとマウスES細胞およびiPS細胞を用いた歯髄細胞分化の評価: 象牙芽細胞擬態マトリックス上に両細胞を播種し, 経時的に total RNAを抽出し, 神経堤細胞マーカー(FoxD3, Sox10), 神経前駆細胞マーカー(Notch-1, Nestin), 象牙芽細胞分化マーカー(DSPP, Enamelysin(MMP-20)), 血管内皮細胞マーカー(Flk-1, VE-cadherin)の遺伝子発現動態をRT-PCR法を用いて観察した結果, 両細胞において統計学的有意な歯髄細胞分化マーカの発現が観察された. 2, 象牙芽細胞擬態マトリックスと両細胞を用いた歯髄細胞分化に関与するシグナルカスケードの検討: 歯髄細胞分化に関わるWntシグナル伝達経路について, siRNAを用いて検討したところ, 両細胞において統計学的有意なWnt5シグナル伝達経路の存在が明らかとなった.
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