研究実績の概要 |
本研究では, 新規に確立したマウスES細胞およびiPS細胞由来高純度象牙芽細胞の培養後に界面活性剤を灌流して, 象牙芽細胞由来の脱細胞化した細胞外マトリックス(象牙芽細胞擬態マトリックス)を作製し, マウスES細胞およびiPS細胞を用いて歯髄組織の再細胞化の効率と適正条件を生化学的手法を用いて基礎的検討を行う. さらに, ラットを用いたin vivoにおいて, 摘出した歯を基盤鋳型として, 再細胞化した歯髄組織の再生を観察することで, 従来の歯髄保存治療であるう蝕治療法や覆髄法に代わる新規な歯髄再生モデルを構築することを研究目的とする. 平成28年度の具体的到達目標は, 骨系組織由来擬態マトリックス上に幹細胞を播種し, 経時的に total RNAを抽出し, 象牙芽細胞分化因子, 骨芽細胞分化因子および軟骨細胞分化因子の遺伝子発現動態をRT-PCR法とELISAを用いて観察すると同時に, 各々のsiRNAを用いた分化抑制評価を行った.さらに, ヒト幹細胞表層に存在し,擬態マトリックスとの初期接触から分化誘導を導くセンサー分子の同定を行い, 以下の結果を得た. 象牙芽細胞擬態マトリックス(Mom)上に播種したヒト骨格筋幹細胞は, 本細胞から象牙芽細胞分化誘導に必須な分化誘導因子を自己分泌することを確認した. また, ヒト骨格筋幹細胞と Mom との接触において, 幹細胞表層のメカニカルセンサー分子が α7 integrin であること,さらに, 本タンパク質が Mom 上の 特異的な2種類のタンパク質を認識することで,象牙芽細胞分化を導く分子機構であるが明らかとなった.
|