研究実績の概要 |
前年度のヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBM-MSC: Human bone marrow derived mesenchymal stem cells)に加えて、本年度はヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hAT-MSC: Human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells)の増殖と分化に及ぼす中鎖分割ポリリン酸(鎖長65:Poly-P65)の効果とともに,抗菌作用についても新たに検索し,以下の知見を得た. 1. Poly-P65のhAT-MSC増殖における至適濃度:Poly-P65を所定濃度(0.05, 0.1, 0.2, 0.5 mM)でhAT-MSCに添加して24時間作用後,細胞増殖活性を測定した結果, 0.2mM Poly-P65添加群において, 統計学的有意な細胞増殖が観察された. 2. hAT-MSCの骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現に対するPoly-P65の効果:0.2 mM Poly-P65添加後7日間培養で,hAT-MSCの骨芽細胞分化マーカーの遺伝子とタンパク質の発現が統計的有意に認められ,石灰化マーカーであるアルカリホスファターゼ活性ならびにアリザリンレッド染色度の上昇も認められた. さらに,今回新たにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-13についても検索した結果,0.2 mM Poly-P65はhAT-MSCの MMP-13遺伝子とタンパク質発現を誘導し,また酵素活性の統計的有意な上昇が認められた. 3. Poly-P65の抗菌作用:大腸菌およびPorphyromonas gingivalisを用い,ディスク法によりPoly-P65の抗菌作用について検索した結果,ヒト間葉系幹細胞において細胞増殖能と骨芽細胞分化能を示した0.1/0.2mM Poly-P65では,抗菌作用が認められなかった.
|