本研究は,フルカウントゥアジルコニア修復について,前向き臨床研究を行う.歯列・咬合面形態の変化や咬合力・咀嚼能力などの機能の状態を継続的に追跡し,長期予後を得るための要件を明らかにすることを目的に基礎データを蓄積し,診療指針作成に向けた長期前向き臨床研究の基盤を作ることを目的とする. CAD/CAM冠の保険収載の影響により,フルカウントゥアジルコニア修復よりもコンポジットレジンによるCAD/CAM冠の症例が多く集まり,また早期脱離する症例が散見されたため,後ろ向き調査から基礎データを蓄積した. 2014年4月から2016年1月までの22か月間に,東北大学病院咬合修復科および研究協力施設の臨床経験3年以上の歯科医師15名が装着したCAD/CAM冠361症例について調査を行った.除外基準は治療対象歯の対合歯が欠損した症例とした.調査項目は性別,装着時年齢,装着した歯種,クラウン内面のシラン処理の有無,合着セメント,対合歯の材料,使用したコンポジットレジンブロック,歯科医師の臨床経験年数,トラブル発生の有無とし,歯科診療録および歯科技工記録から抽出した.なお,本研究は東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2015-3-2). 装着後のトラブルは361装置中27装置(7.5%)に発生し,トラブルの内容は全て脱離であった.装着期間は0.1~20か月で,中央値は7.2か月であった.脱離した症例は,いずれも装着後1年以内に発生し,27装置中21装置が装着後半年以内に発生した.今回の調査項目からは,脱離に対するリスク因子の解明には至らなかったため,新たな調査項目を増やし,前向きに調査を行うことも視野に入れ調査を継続する.
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