研究実績の概要 |
加齢, 唾液腺障害, 全身疾患の症状, 薬剤の副作用, 顎・顔面腫瘍の手術, 放射線療法などにより唾液分泌量の減少などが起こり, 義歯の維持安定を得るのが困難な患者は多い. これら患者は義歯安定剤使用を余儀なくされることもあるが, 強力な義歯安定剤は除去困難であり, 口腔粘膜や義歯の残留物が口腔粘膜の炎症を引き起こす事が多々ある. よって, 接着性を有する義歯開発が求められている. これまでに, 接着性を有する粘着シリコーン開発に着手し, キャタリスト, ベース混和率を変化させる事により, 粘着性を有するシリコーンを開発した. しかし, 極少量キャタリスト計量に熟練を要する, サンプルに多数気泡が混入するなどの問題があった. そこで, キャタリストと架橋剤の比率を変化させる事により粘着性を出し, 2種類の同量のシリコーンを反応させることによって製作できる改良型粘着シリコーンを開発した. この改良型粘着シリコーンは気泡をほとんど含まず, 粘着性を示した. しかしながら, 人工唾液の存在下において, 改良型粘着シリコーンは接着力が低下してしまうため, この粘着シリコーンに親水性を付与する必要がある. そこで本研究では, 義歯床粘膜面応用を目的とした親水性粘着シリコーンの開発・安全性の検討を行う. これまでに, o-ニトロベンジルを使い, カテコール基を空気酸化されない物質に変換し, これを含む水溶性ポリマーを粘着シリコーンに応用することで, 水の存在下においても接着性を有する粘着シリコーン製作を試みている. 化学反応時, 時間経過後に有毒物質が放出されない, また, 時間経過により粘着強度の変化がおこりにくい材料にすべく改良中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在, o-ニトロベンジルを使い, カテコール基を空気酸化されない物質に変換し, これを含む水溶性ポリマーを粘着シリコーンに混和した, 親水性粘着シリコーン製作を試みている. 化学反応時や時間経過後に有毒物質が放出されない様, また, 時間経過により粘着強度の変化がおこりにくい材料にすべく改良中である.
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今後の研究の推進方策 |
化学反応時, 時間経過後に有毒物質が放出されない様, また, 時間経過により粘着強度の変化がおこりにくい材料の開発を目標として, 引張接着試験, 曲げ・圧縮強度, 人工唾液(サリベート:帝人ファーマ)存在下における瞬間接着レベル(the rolling ball tag test), 接着度(クリープメーター:山電)などのデータを参考に, 最適なアクリルアミドポリマー粉末量を検索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
化学反応時や時間経過後に有毒物質が放出されない様, また, 時間経過により粘着強度の変化がおこりにくい材料を検索中である. 今年度は混和材料, 分量の最適候補が絞れなかったため, 引張接着試験, 曲げ・圧縮強度, 架橋構造変化観察についての解析を行えなかった. 次年度は, 数パターンの最適量候補を絞りサンプルを作成し, これら解析を行う予定である. よって, 当該年度購入予定の試験試薬等を次年度購入としたため.
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として, 実験義歯製作費, シリコーン, 試験薬剤, 画像撮影費に使用. 旅費として, 資料収集および成果発表を目的とした学会参加費に使用. 謝金として, 実験補助や外国語論文校閲に使用. その他, 印刷費や機械修理費に使用予定.
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