研究課題
近年、透光性をもつイットリア系ジルコニア(Y-TZP)で作製したクラウンブリッジが多用されるようになった。ところが、透光性Y-TZPは、光を透過させるためにアルミナを減少させている。このため、口腔内で長期使用した場合、Y-TZPの低温劣化によるクラウンブリッジの破折が懸念される。我々は、以前にY-TZPに微量のシリカを添加することにより低温劣化を抑制することを報告した。本研究では、これを応用して低温劣化しにくい透光性Y-TZPの開発を試みた。試料には、前年の研究で、市販の透光性ジルコニアと同程度の透光性を示し、市販の透光性ジルコニアよりも高い強度と劣化抑制を示した試作Y-TZP (イットリア3mol%、シリカ0.12wt%、焼結温度1450℃)を使用した。コントロールには市販の透光性Y-TZPを使用した。試作Y-TZP、市販Y-TZPともにCAD/CAMにてクラウンを製作し、支台歯との適合性と低温劣化による破壊荷重の変化を評価した。その結果、適合性は試作Y-TZP、市販Y-TZPのクラウンと支台歯の内面間隙量、辺縁間隙量に有意な差を認めなかった。市販Y-TZPクラウンは劣化処理後に破壊荷重が約20 %低下し、有意な差を認めたが、試作Y-TZPクラウンは劣化処理後の有意な低下を認めなかった。また、試作Y-TZPクラウンは劣化なし群,劣化群ともに市販Y-TZPクラウンよりも有意に高い値を示した。また、市販Y-TZPクラウンは劣化前後で単斜晶割合の有意な増加を認めたが、市販Y-TZPクラウンでは、有意な増加は認めなかった。以上のことから、試作ジルコニアで製作したクラウンは、市販高透光性ジルコニアクラウンよりも劣化しにくく,加速劣化試験後も破壊荷重が低下しなかった.
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Dent Mater J.
巻: 35 ページ: 571-577
10.4012/dmj.2015-274.