研究課題/領域番号 |
26462919
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉備 政仁 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招へい教員 (50294111)
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研究分担者 |
池邉 一典 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70273696)
佐々木 敏 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70275121)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯学 / 栄養学 / 細菌学 / 老化 |
研究実績の概要 |
【目的】高齢者肺炎の多くは誤嚥性肺炎であるといわれており,誤嚥性肺炎は口腔常在細菌により引き起こされる.近年,多種多様な常在細菌叢を群衆としてとらえるマイクロバイオームが注目を集めており,口腔領域では口腔細菌叢と全身健康状態に関連があると報告されている.しかし,口腔細菌叢の構成と全身疾患との関連は未だ明らかではない.本研究は,高齢者の口腔細菌叢と全身状態との関連を解明することを目的とした. 【方法】大阪府内の介護施設に入居する高齢者50名を対象に,口腔状態の記録,口腔機能検査,ならびに全身的既往歴,服薬中薬剤,生化学検査記録の調査を行った.このうち,15名の唾液から菌DNAを抽出し,次世代シークエンサーによる16S rRNAの網羅的解析を行った. 【結果と考察】15名の対象者において,口腔清掃状態は良好に管理されていた.16S rRNA解析の結果,対象者の口腔細菌叢を構成する細菌として平均162菌種が同定された.口腔細菌叢と全身状態との関連を調べたところ,糖尿病罹患群ではActinobacteria,Firmicutes(門)が優勢であり,Bacteroidetes,Proteobacteriaが劣勢であった.さらに,属レベルではActinomyces,Selenomonas,Veillonellaが優勢であり,Porphyromonas,Prevotella,Neisseria,Haemophilusは劣勢であった.また,種レベルでの比較においては,糖尿病群でSelenomonas noxiaが優勢であった.糖尿病罹患の有無に関わらず,口腔の主要な菌属のひとつであるStreptococcusの中でStreptococcus pneumoniaeの占める割合が最も高かった.炎症性マーカーであるCRPやA/G比と口腔細菌叢との有意な関連はみられなかった.これらの結果は,糖尿病が口腔細菌叢の構成に影響を及ぼす一因である可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被験者の調査は順調に進んでいる.管理栄養士の分析がやや遅れ気味である.
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今後の研究の推進方策 |
前年の結果を踏まえ,さらに被験者を増やす.管理栄養士の分析について,研究協力者を増やす,アルバイトの人数を増やすなどし,分析のペースを上げて行く.
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次年度使用額が生じた理由 |
要介護高齢者を被験者としているため,当日の体調が悪かったり,入院したりするので,研究期間内に調査ができた被験者数が,予定より若干少なかった.
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次年度使用額の使用計画 |
施設の職員や管理栄養士と密に連絡をとし,あきらめずに複数回調査試み,被験者数確保にに務める.
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