研究実績の概要 |
オッセオインテグレーションをしたインプラント周囲の骨動態を解明すべく、長期的に機能させたインプラントの周囲骨を経時的に組織学的および免疫組織学的に検討した。 ラット口腔内にインプラントを埋入し、オッセオインテグレーション獲得したのを確認し、咬合力をかけた群とかけない群を経時的(4, 8, 12, 16週間)に観察、比較した。マイクロクラックはどの観察期間でもスクリュー先端から発生しているのが確認できた。各群間では有意差は認められなかった。免疫組織学的においてはスクリュー付近でsclerostinの発現が亢進した。同個体の天然歯周囲骨にはインプラントスクリュー付近に発生したマイクロクラックのような組織像は認められなかった。 MLO-Y4細胞の三次元ゲル包埋培養により、骨細胞間の連絡機構、三次元ネットワーク構造を再現した。多段階のひずみを付与できるシリコーンウェル製培養装置上でMLO-Y4の三次元培養を行い、10種類の反復伸張刺激(変位量:0.095~1.22%)を24時間与え、MLO-Y4の生死や遺伝子発現の変化を観察した。また、MLO-Y4培養上清のマウス骨髄細胞の分化に対する影響を解析した。反復伸張刺激のひずみ量が大きくなるに従って死細胞数が増加した。また、real-time RT-PCR法にてRANKL/OPG比の増加、sclerostinの発現減少が観察された。MLO-Y4培養上清を添加したマウス骨髄細胞においては、低ひずみ下の培養上清において骨髄細胞のアルカリフォスファターゼ活性上昇を認めた。 インプラント周囲骨にはマイクロダメージを生じることがわかった。また、荷重により骨吸収因子の発現が亢進することから、荷重の有無にかかわらずインプラント周囲骨には骨代謝がこっていること、荷重により、より強く骨吸収因子が発現され骨代謝の開始を促す可能性が示唆された。
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