研究実績の概要 |
本法で用いるグルコセンサーの精度と繰り返し回数を考慮した術者内信頼性を検討し,また実際の被験者から採取した溶液を用いた場合の再現性と咀嚼能率測定値の試行間変動を検討した.1) グルコセンサーの精度と術者内信頼性;同一術者が濃度の異なるブドウ糖溶液を5種類各溶液でグルコース濃度を10回ずつ検出した.結果グルコセンサーのグルコース濃度計測値は,ブドウ糖溶液実測値から求めた回帰式,回帰係数ともに有意であった(P<0.0001) .2)被験者からの採取溶液における再現性;被験者は健常歯列者43名(47±19.2歳, 女性27名,男性16名)である.主咀嚼側でグルコース入りのグミゼリーを20秒咀嚼した後,グミを嚥下しないで吐き出させ,10mlの水でうがいさせた後,同一術者がろ過溶液を15秒間撹拌してグルコース濃度を3回ずつグルコセンサーで測定した.結果,採取溶液におけるグルコース濃度の平均値は245.3±94.6㎎/dlであり,また統計処理の結果,ICC(1,1)がP=0.984, ICC(1,3)がP=0.995であった(P<0.0001) .3)被験者の咀嚼能率測定値の試行間変動;被験者は3回来院可能な10名 (29±6.8歳, 女性5名,男性5名)で,測定方法は実験2と同様で日を変えて3試行を行った結果,検査日の異なる試行間で有意差がなかった .4)性差と年齢による比較;女性27名,男性16名の性差と,年齢構成の異なる2群間,若年者(34歳以下)16名と高齢者(60歳以上)17名の比較を行った結果,性差と年齢構成の異なる2群間において有意差がなかった. 結論として,グルコセンサーの精度と術者内信頼性は高く,1人の験者が1回測定すれば十分であると結論できた.さらに検査日の異なる試行間で差がなかったので,検査結果の再現性が示され,経時的な咀嚼能率の検査に応用可能と思われる.
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