研究実績の概要 |
咀嚼能率を客観的に計測することは顎機能を評価する上で非常に重要で以前から種々の方法が試みられてきた.近年開発されたGC社製グルコセンサーは,簡便に咀嚼能率を測定する機器だが,他の客観的咀嚼能率検査法との比較を行った報告はない.またこの方法において,詳細な手技の違いによる結果の影響も検索する必要がある.今回,グルコセンサーを用いて異なる手技による結果の影響を観察することと,他の客観的咀嚼能率として,食塊粒度計測法との比較を行い,グルコセンサーによる咀嚼能率の評価法について考察した.被検者は健常者20名である.グルコセンサーの手技の変更による評価で,主咀嚼側と自由咀嚼の20S咀嚼時のグルコセンサー測定値に有意差はなかった.また主咀嚼側でグルコセンサー咀嚼能率試験を行うと,咀嚼時間に伴いグルコセンサー測定値が上昇した (P<0.01).食塊粒度計測には被験食材(生人参2g)を嚥下するまでの自由咀嚼回数を2回計測し平均咀嚼回数を算出した.次にこの咀嚼回数で咀嚼後に食塊を回収し,粒度解析を行った.界面活性剤による表面処理後,溶媒中に均一に食塊を分散させ,二重暗視野照明を用いたデジタル画像を撮影した.測定項目は,咀嚼回数,particle size index (SI:粒子径係数) ,homogeneity index (HI: 粒子均一性係数) とした.食塊粒度計測とグルコセンサー測定値の比較で,自由咀嚼グルコセンサー咀嚼能率試験(咀嚼時間;20 秒)の結果と,ニンジン咀嚼の咀嚼回数,ニンジン咀嚼後の食塊粒度のSI, HI間には相関を認めなかった.今回,本実験のニンジンの食塊粒度計測による咀嚼能率検査は,被験者それぞれが嚥下するまでの異なる咀嚼回数で咀嚼させているので,時間的制約がないという要因で,咀嚼時間を限定しているグルコセンサーによる咀嚼能率試験とは相関しなかったと思われる.
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