研究課題
【目的】要介護高齢者の多くは,口腔内に多くの問題を抱えており,中でも義歯の不適合,口腔乾燥症により,義歯の維持が困難になる場合が多い.義歯安定剤(以下,安定剤)を使用する患者も多いと推測されるが,清掃性や義歯機能への影響が懸念される.そこで義歯安定剤の代わりに,口腔保湿剤(以下,保湿剤)の使用を推奨することがある.本研究では,上顎全部床義歯装着者を対象に,安定剤と保湿剤を使用させ,その選択基準に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的とした.【方法】 被験者は同意を得た25名の上顎全部床義歯装着者とし,安定剤1種類と保湿剤3種類(リキッド,ジェル,スプレー)を渡した.安定剤は1日1回,保湿剤は1日3回,義歯内面に塗布するように指示した.使用期間はそれぞれ3日間とした.安定剤と保湿剤のそれぞれの使用感(使用後アンケート:10項目)と最終的に何を使いたいか(最終アンケート:2項目)を調査した.【結果と考察】使用後アンケートの結果から,安定剤は「安定」「咀嚼」「適合」「維持」で有意に高評価であって,最終アンケートで安定剤を選択した被験者は14名,保湿剤を選択した被験者は11名(ジェル9名,リキッド1名,スプレー1名)であった.この2群を比較したところ,安定剤の選択者は安定と違和感で,保湿剤選択者は乾燥感で選択した者の評価が高かった.以上の結果から,安定剤と保湿剤の選択には,使用した際の安定,違和感,乾燥感が関与することが示唆された.
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JSM Dentistry
巻: 5 ページ: 1080
巻: 5 ページ: 1099
巻: 5 ページ: 1098