顎関節症の一つに筋・筋膜疼痛がある.これに罹患した患者は咀嚼筋の疼痛とそれに伴う開口障害に悩まされる。原因としてブラキシズム(はぎしり,くいしばり)が第一に挙げられるが,未だ研究結果による支持は得られていない.そこで本研究は咀嚼筋以外の顎顔面領域の筋に同様の抗疲労性があるのか検証する事を目的とし、顎顔面領域の筋に実験的活動させた時の筋の状況を調査した.今回調査した顎顔面領域の筋は口輪筋を含めた口唇周囲の筋,眼輪筋を含めた眼球周囲を取り巻く筋,そして舌筋であった.これら3部位に実験的活動をさせ,その時の該当筋内で起きている反応と被験者の主観的感覚を調査した.16名の健常者が本研究に参加した.結果は「閉口筋・眼輪筋・口輪筋には抗疲労性があり,一定の疼痛は発生するものの四肢筋のような筋・筋膜疼痛は起こらない」であった.顎顔面筋,もしくは日常頻繁に収縮する筋群は四肢筋とは異なった特徴を有することが示唆された.
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