研究実績の概要 |
歯質接着性レジンの接着長期耐久性を低下させる因子の一つに象牙質基質から放出されるMMPs(matrix metalloproteinases)の存在が指摘されている。このMMPは象牙質基質に内在する一種のHost-derived Enzymeであり、レジン・象牙質接着界面においてコラーゲン線維の加水分解を誘発して接着構造を劣化させる。
(研究目的)本研究は、レジン系材料の長期接着耐久性のさらなる向上を目指して、ヒト象牙質基質由来MMP活性を抑制する金属ナノ粒子添加レジン材料の開発を目的とする。
(研究結果および考察)各種ナノ金属粒子(Au, AgおよびPt)は、MMP活性(MMP-1, 2, 8および9)を阻害することが判明した(MMPアッセイおよびザイモグラフィーによる)。これは、コアメタルを被覆するポリマー内の官能基がMMPの活性中心に結合することに起こると推測される。また、マクロファージ様細胞(RAW264)および線維芽細胞(L929)を用いた細胞毒性試験において、金ナノ粒子においては細胞毒性を有しない性質を同時に持っていた(WST-8およびLDR releaseアッセイによる)。しかし、銀および白金粒子においては明らかな細胞毒性を有する。この細胞毒性の発現は、ナノ粒子のコアメタルの組成に起因ちている。細胞内ライソゾームで分解産物を作りずらい金で、毒性の発現が起こらなかったと考えられる。細胞毒性を有しなく、有効にMMP活性を阻害する機能は、抗ガン剤を含む各種歯科・医科材料として有益であると考えられる。ナノ金属粒子とMMP活性の阻害機序の不明な点について、これから研究を継続していく予定である。
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