研究実績の概要 |
種々の金属ナノ粒子でMMP作用の抑制(MMP-1, 8, 9など)が確認された。抑制効果の発現は、MMPアッセイキットとゼラチンザイモグラフィーの双方を使用して確認した。さらに、その効果は、ナノ粒子の粒径が小さいほど大きくなることが明らかとなった。これは、ナノ材料の特徴である表面効果が大きく関係している。マウスRAWおよびL929細胞などを使用して細胞毒性(WST-8およびLDH release assay)および遺伝毒性(小核分析、変形核分析およびコメットアッセイ)の発現を調査した。その結果、銀および銅ナノ粒子を用いた場合、MMP作用を抑制するが、細胞毒性を発現してしまう。これは臨床上、好ましくないが、金ナノ粒子や一部の白金ナノ粒子では毒性は発現しない。これは、MMPの抑制は粒子のコーティング剤(ポリマーなど)が関係するが、毒性の発現は、コアメタルが関係するため、コーティング剤とコアメタルを選択することにより毒性を発現しない、MMP抑制剤の開発が可能となる。しかし、リアルタイムPCRなどで種々の反応を精査すると、毒性および遺伝毒性を発現しない場合においても、炎症反応(IL-1, 6および8など)などが確認できるために、さらに調査が必要である。さらに、それらナノ粒子をアクリルレジン(Bis-GMA, TEGDMAおよびHEMAなど)に添加して種々の物性を評価した場合、圧縮強さの向上などの機能の向上が確認された。一部、コーティング剤が重合阻害剤となりポリマーの重合を阻害したが、多くのものは正常に機能した。以上の実験結果から、金属ナノ粒子のMMP阻害剤としての歯科的応用は有効であることが示唆された。
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