試作充填用レジン添加型グラスアイオノマーセメントの牛歯に対するせん断接着強さの測定を行った.実験には新鮮抜去牛歯を歯冠部で切断後エポキシ樹脂に包埋し象牙質面を露出させ,耐水研磨紙600番まで研磨した.その後,市販の歯面処理剤(10%ポリアクリル酸水溶液)を用いて20秒間処理を行い水洗・乾燥後被着面とした.また,比較対照として,被着面処理を行わない試料を作製した.試作セメントとして,レジン成分に親水性多官能性モノマー(セメントA),HEMA(セメントB)を用いたレジン添加型グラスアイオノマーセメントを用いた.なお,レジン成分の添加量をそれぞれ10wt%とした.なお,比較対照としてセメントAならびにBと同一成分でレジン成分のみ含まないセメント(コントロール)を用いた.各セメントの粉液比を4.5/1.0とした.被着面上に内径4mm,高さ6mmnテフロン製モールドを置き,セメント練和物を填塞し,定圧荷重装置で15kgの荷重を加えた.その後,光照射を20秒間行い,37℃イオン交換水中に24時間浸漬保管した.せん断接着試験は室温大気中でクロスヘッドスピード1.0mm/minの条件で万能試験機を用いて行った.その結果,コントロールとセメントAおよびセメントBの間のせん断接着強さに有意な差は認められなかった.また,象牙質表面の処理の有無によるせん断接着強さにも有意差は認められなかった.本実験条件では,親水性多官能性モノマーを用いた試作レジン添加型グラスアイオノマーセメントの接着強さは従来レジン成分として用いられているHEMAと比較して,その接着強さに差がないことが明らかとなった.
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