覚醒時に観察される非機能的な咬合接触(日中歯牙接触癖,Tooth Contacting Habit:TCH)は顎関節症患者の多くに認められ,この習癖を是正することにより顎関節症症状の改善がえられることから,顎関節症の原因因子として注目を集めている.しかしながら,顎関節症の原因因子として考えられている睡眠時ブラキシズムの是正方法が明らかになっていない.本年度は,覚醒時非機能的咬合接触(TCH)の是正治療が睡眠時咀嚼筋筋活動の軽減へ及ぼす影響について検討した.DC/TMDに基づき選択した顎関節症患者(男性3名,女性3名,平均年齢42.8±15.0歳)の覚醒時10時間(8:00-18:00)のTCHイベント頻度(%)および睡眠時約6時間(24:00-6:00)の咀嚼筋筋活動イベント数(個)を連続3日間測定し平均値をTCH是正介入前後の各イベントの変化として検討した.TCHイベント頻度は申請者らが開発した“TCH測定システム”を用いて測定した.咀嚼筋筋活動はウェアラブル超小型筋電計を主咀嚼側咬筋部皮膚に貼り測定した.TCHイベント頻度(%)はTCH是正介入前44.3±17.4に比較し介入後21.7±17.6に大幅に減少したが,咀嚼筋筋活動イベント数(個)は介入前48.4±10.4から介入後43.2±11.0にわずかな減少を示したにすぎなかった.覚醒時に無意識に発現するTCHと睡眠時に発現する咀嚼筋筋活動とは関連性があるとは言えない可能性が示唆された.しかし,被験者数が少ないため弱い主張しかできず,継続的に本研究を遂行し被験者数を増やした上で最終的な結論を出す所存である.
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