平成28年度は、咬合関連疾患を有する患者の咬合接触様相が脳幹反射に及ぼす影響について研究を進め、低レベルのクレンチングが単独歯の咬合接触面積に及ぼす影響について検討した。咬合接触関係の記録は、均一に練和した咬合接触検査材(ブルーシリコーン®,ジーシー)を用いて行った。これまでの研究で咬合接触関係を検査するには適切な咬合力が判明しているので、まず導出用表面記録電極NM-315S(日本光電社製、東京)を咬筋筋束の方向に沿って15mm離して貼付し,接地電極NM-522S(日本光電社製、東京)は左手首に設置した。次いで筋電図波形を2000-5000倍に増幅し、フィルタリング (周波数帯域 20-1000 Hz)の後、サンプリングレート4000 Hzにて記録し、ビジュアルフィードバックにて最小の力、20% 、40%MVCの力で咬頭嵌合位を維持し、記録材を介在させた状態を硬化終了までの1分間保持するよう指示し採得した。咬合接触関係の解析は、咬合接触部位におけるシリコーンの厚さによる光透過レベルを変化させた検出レベル1~5で行った。検出レベル1から4では,臼歯部においてbaselineよりも20%MVCおよび40%MVCで咬合接触面積に有意な増加を認めた(P < 0.05)。最も薄い検出レベル5では,臼歯部もまた,baselineよりも20%MVCおよび40%MVCにおいて有意な増加を認め(P < 0.01),そしてさらに,20%MVCと40%MVC間でも有意な増加を認めた(P < 0.05)。以上の結果から、大臼歯で咬合接触面積は大きい傾向を示し、臼歯部では約10%MVCである最小限の力による咬合接触面積は20%、40%MVCとクレンチング強度の増加により、咬合接触面積も増大するため、咬筋抑制反射は大臼歯部の咬合接触の影響が大きいことが示唆された。
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