本研究は、骨様組織体作製技術と凍結乾燥技術を組み合わせることによる新規骨移植材の創製を目的としており、平成28年度は、凍結乾燥処理を施した骨様組織体(乾燥骨様組織体)の骨移植材としての有用性を評価した。乾燥骨様組織体を骨移植材として使用した場合、血液への暴露により大きさや内部構造が変化する可能性が考えられたことから、乾燥骨様組織体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬した場合の経時的な大きさ変化を測定した。その結果、PBS浸漬後1時間以内に骨様組織体の体積は約1.5倍に増加することが分かった。一方、PBS浸漬1時間後から24時間後までにおいては、骨様組織体の大きさに変化はみられなかった。次に、乾燥骨様組織体、および乾燥処理を施していない骨様組織体からパラフィン包埋薄切切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行ったところ、両者の内部構造に変化はみられなかった。さらに、オステオポンチンの免疫蛍光染色を行ったところ、乾燥骨様組織体内部が染色されることが分かった。以上のように、平成28年度の本研究において、乾燥骨様組織体が生体内で安定した材料であること、さらに、オステオポンチンなどの骨基質タンパク質の活性が維持された材料であることが分かった。本研究によって作製法を確立することに成功した乾燥骨様組織体を応用することで、細胞療法とサイトカイン療法の両者の特徴をあわせ持つ新規骨移植材を作製できる可能性が示された。
|