研究課題/領域番号 |
26462977
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 穂高 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (50433959)
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研究分担者 |
松永 智 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (70453751)
大野 建州 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80435635)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インプラント / 終末糖化産物 / 糖尿病モデルラット / AGEs |
研究実績の概要 |
骨内コラーゲンの老化架橋の原因となる終末糖化産物(AGEs)の発現が骨質を低下させ、骨折のリスクを増加させることが報告されている。そこで我々は、AGEs が高発現を来たす糖尿病がインプラント治療のリスクとなるのは、易感染性や治癒不全だけでなく、骨内のAGEs 蓄積による骨質低下が影響していると考えた。本研究ではStreptozocin (STZ)投与によるAGEs高発現ラットを作成し、AGEs の発現量と大腿骨に埋入したインプラント体のオッセオインテグレーションの評価項目を比較、末梢血AGEs 発現量との相関性を明らかにすることで「AGEs がインプラント治療におけるリスク評価に有用である」ことを証明することを目的とする。 平成25年度では、前年度から継続して、本実験モデルに最適な糖尿病モデルの作成条件もとに、4週齢雄性SD系ラットに対して尾静脈内投与(65mg/kg)を行ない、STZ投与1週間後に血糖値が300mg/dlとなった糖尿病ラットを実験群、STZの代わりに生理食塩水を投与した群を対照群とした。右側に対してインプラントを埋入、左側は骨欠損のみとし術後2、4週後に大腿骨を摘出した。放射線学的評価としてマイクロCT撮影後、骨欠損形成部を関心領域とし3次元骨構造解析ソフトウエア(TRI/3D-BON)による解析を行った。マイクロCT所見では、両群ともに2週例で骨欠損境界部に新生骨が見られ、4週齢では全層に不透過像が確認された。3次元骨構造解析では、2、4週齢において有意差は見られなかった。組織形態学的評価としては、脱灰後にインプラント体を除去し、パラフィン切片を観察した。インプラント周囲骨は両群ともに2週例から確認され、4週齢で緻密化していた。今後は分子生物学評価において最終糖化産物AGEsの発現と、骨分化マーカーの遺伝子、タンパク発現レベルを比較評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の平成24年度において、糖尿病モデルラット作成において致死率が50%と高く、STZ投与条件の再検討が生じたため、実験の進捗にやや遅れが生じた。その後、STZ投与条件が決定され、糖尿病モデルラット作成は順調に行われたが、4週齢の実験群において感染によるドロップアウトが30%程度の割合で生じた。このため、長期群のサンプルを揃えるのに時間を要してしまった。 現在は、実験の滅菌レベルを上げたのと動物実験の手技の向上によって、成功率は上昇してきている。採取済みのサンプルからの分子生物学的評価と動物実験を並行していくことで、実験の進捗の遅れは修正が可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
STZの投与量、方法ならびに実験条件が定まったことから、放射線学的評価、組織形態学的評価における統計分析をより確実にするために、n数を増加していくと同時に、AGEsの一種であるPentosidineの発現を分子生物学的評価(定量的RT-PCR法、ELISA法など)により計測し、これらの相関性を明らかにしていく予定である。 また、これらの実験結果については関連学会し、そこで得られた意見をまとめて論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験予定より、STZ投与条件の決定ならびに、4週例の術後感染による十分なサンプル数の確保が出来なかったため、AGEs発現量を検討するための分子生物学的評価の進行にやや遅れが生じている。特にELISA法キットは要冷保存より長期保管が出来ないこと、1プレートで96サンプル計測をまとめて計測する必要があるため、必要サンプル数が揃うまでは購入を控えた。これによって、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遅延理由となったSTZ投与条件の決定され、さらに術後感染のより厳密な予防対策を図ることでサンプル数は徐々に確保できている。サンプルの必要数が揃う見込みが出来た時点でELISAプレートの購入を予定しており、これにより次年度使用額分は予定通り使用できる見込みである。
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