研究課題/領域番号 |
26462980
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
月村 直樹 日本大学, 歯学部, 准教授 (10301558)
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研究分担者 |
萩原 芳幸 日本大学, 歯学部, 准教授 (00228389)
本田 和也 日本大学, 歯学部, 教授 (30199567)
池田 貴之 日本大学, 歯学部, 助教 (30366603)
本田 雅規 日本大学, 歯学部, 准教授 (70361623)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チタン / インプラント / オッセオインテグレーション / 紫外線 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
近年の研究で、骨インプラントとして用いられるチタンの生体親和性が継時的に低下するチタンのエイジングが明らかにされ、このチタンのエイジングに対する解決策として光機能化が報告されている。チタンのエイジングは、チタン表面に炭素原子が付着し、表面が疎水性となり、負に荷電した表面となり、その結果生体親和性が低下する現象である。光機能化はエイジングしたチタン表面から効率的に炭素原子が取り除き、超親水性の表面とし、正に荷電した表面とする、紫外線を用いた表面処理である。これまでの研究では、骨芽細胞を光機能化したチタン上で培養した場合、未処理のものと比較して良好な細胞接着と増殖、分化が観察されることが報告されている。 しかし、生体内に埋入されたインプラント周囲には骨芽細胞だけでなく多種多様な細胞が存在する。例えば免疫担当細胞は生体にとって異物であるインプラントに対して何らかの反応を示すことは明らかであり、いかに過剰な免疫応答を抑えるかはオッセオインテグレーションの獲得にとって重要な因子である。本研究では、免疫担当細胞の中でも生体内に入った異物を最初に認識するマクロファージに着目し、光機能化の効果を検証することとした。 初年度では、in vitroの実験で用いるマクロファージの培養法を確立した。ラット骨髄をM-CSFを含む培地中で培養したところ貪食能を有する細胞が確認された。また、実験に用いるチタンディスクも作製を終えたため、細胞培養実験を行うための体制が整ったといえる。また、培養した細胞から分泌されるサイトカインを計測する計画となっていたが、研究チーム内で慎重なディスカッションを重ねたうえで、測定するサイトカインの種類の決定を行った。その後、実際の測定に使用する実験キットも購入を終えたため、サイトカイン測定に関する準備も体制が整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの実験でラット骨髄由来マクロファージの培養法を確立した。過去の報告で用いられた方法を参考として、ラット骨髄をMCS-Fを含む培地中で培養いたところ、貪食能を有する骨髄由来マクロファージが誘導された。現在、獲得された細胞を未処理のチタンディスクと光機能化を行ったチタンディスク上で培養し、それぞれの条件でマクロファージから分泌される液性因子(サイトカイン)をサイトカインアレーキットにて計測し、比較検討を行う予定となっている。現在、サイトカインアレーキットの選択と発注を終えている。初年度においては、サイトカインアレーによる解析を終えるはずであったが、マクロファージの分化誘導に用いるMCS-Fの選択やサイトカインアレーキットの選択に当初の計画より時間時間を要してしまい、実験の遂行には若干の遅れが出ている。理由としては、研究グループ内で行ったディスカッションの中で、サイトカインの解析に関しては、当初予定していた炎症サイトカインだけではなく、抗炎症や治癒に関わる因子の検索も行うと実験の意義が増すのではないかという意見があり、測定するサイトカインについて検討を行ったためである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で培養法が確立された、ラット骨髄由来マクロファージを未処理のチタンディスク上と光機能化されたチタンディスク上の両方の条件下で培養し、マクロファージの分泌するサイトカインを炎症サイトカインと抗炎症サイトカインに着目して計測、定量することを予定している。また、in vitroの実験と並行して、ラット大腿骨に対してミニインプラントを埋入し、組織学的観察を行うin vivoの実験を計画している。未処理と光機能化を行ったチタン製ミニインプラントをラット大腿骨に埋入し、マクロファージが埋入されたインプラント周囲に現れると考えられる初期の段階において、組織学的な観察を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の準備に当初の予定より時間を要してしまったため、実験の進捗状況に若干の遅れが出てしまい予算の使用も一部あと送りとなったため、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度で終えることができなかった、in vitroの実験は準備は終えているため、可及的速やかに遂行し、実験の遅れを取り戻すことにより、繰り越した予算の使用は適切に行われる予定である。
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