研究課題/領域番号 |
26462982
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
山越 康雄 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (20182470)
|
研究分担者 |
山本 竜司 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20410053)
唐木田 丈夫 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (40367305)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 歯 / 歯髄 / 象牙芽細胞 / 遺伝子 / タンパク質 / 生理活性物質 / 再生 |
研究実績の概要 |
象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)は象牙芽細胞から合成・分泌された後、BMP1、MMP-20、MMP-2などのプロテアーゼによって象牙質シアロタンパク質(DSP)、象牙質糖タンパク質(DGP)、象牙質リンタンパク質(DPP)の3つのタンパク質ドメインにプロセシングされる。DSPP遺伝子にはDSPP全長体およびDSPのみをコードするスプライスバリアントが存在し、DSPのみをコードするバリアントは歯髄組織と象牙芽細胞に発現が見られ、DSPP全長体バリアントは象牙芽細胞のみに発現が見られることを明らかにした。この結果はDSPP全長体バリアントの発現が歯髄組織中の細胞が象牙芽細胞に分化した際のマーカーとなり得ることを示唆していたので、今年度は本研究課題である歯周組織再生のメカニズムを解明する一環として、ブタ歯髄組織から分離した細胞を不死化し、象牙芽細胞への分化にTGF-bやBMP2などが関与するかを上記2種類のDSPPスプライスバリアントの発現を評価することで検討した。萌出前のブタ切歯の歯髄から分離した細胞にプラスミドpSV3-neoを導入し、G418添加と限界希釈法を用いた培養で単一細胞由来のコロニーから代表的なクローンC1とC2を選び、TGF-bとBMP2に対する反応をDSPPスプライスバリアントおよびDSPPのプロセシングに関与するBMP1およびMMP-20の遺伝子発現で評価した結果、TGF-bおよびBMP2はDSPP全長体バリアントの遺伝子発現上昇には影響を及ぼさない傾向にあることが判明した。しかしながら興味あることにTGF-bおよびBMP2はMMP-20の遺伝子発現を劇的に上昇させたので、今年度の研究では新たに歯周組織再生に及ぼすMMP-20遺伝子の関連についての今後の検討を見出すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は歯周組織再生実験のために歯髄組織から分離した細胞のクローン化への成功となる技術基盤を確立できた。このことは本研究課題のゴールに辿り着くために用いなくてはならない歯根膜細胞のクローン化への技術応用が可能となり、安定した歯根膜細胞を用いてインプラントに結合させた歯根膜細胞から石灰化誘導を促進する研究に期待が得られた。さらにTGF-bやBMP2によって遺伝子発現が上昇したMMP-20が歯髄組織に対して何らかの役割を担っている可能性が得られた。このことは本研究課題において理解しておかなくてはならない歯周組織再生に関わる細胞の分化誘導を知るうえで重要な所見の一つとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は①歯根膜細胞のクローン化を行い、安定した研究が行えるようにすること、②歯根膜細胞に対するTGF-bアイソフォームの作用性を調べることなどを検討した後、➂歯根膜細胞をチタンインプラントへ播種後、DSP-TGFbおよびDPP-TGFb複合体を添加し、石灰化誘導が行われるかを検討する。結果の検出方法は石灰化の検出はアリザリンレッド染色、石灰化細胞の分化指標にアルカリホスファターゼ活性の測定、定量PCRでのマーカー遺伝子の検出などを行い、石灰化誘導法を最適化する予定である。 また、④本年度の研究で得た歯髄組織中の細胞から象牙芽細胞に分化誘導を行う因子を見つけることも継続する。⑤さらにはTGF-bおよびBMP2で遺伝子発現が上昇したMMP-20の役割も解明していく。
|