研究課題
本年度は①焼成後の炭酸含有アパタイト(CA)の物性解析、②CA上での培養細胞の応答解析を行い、①②の結果から次年度に予定していた③動物モデルへの移植実験を行い、CAの骨再生能について検討し、以下の結果を得た。① 焼成温度、焼成時間、予備加圧の有無など異なる条件下でCAを焼成し、X線回折、SEM観察、全反射レーザー顕微鏡観察による結晶性の解析とFTIR、熱量分析による残存炭酸含有量についての解析を行った結果、高温で焼成するほど結晶性は向上するが水酸化アパタイトに比べ、その結晶成長は1/10程度であること、低温焼成のものは表面がより塑像であるとの結果を得た。また、焼成温度、時間によって残存炭酸含有量が異なり、炭酸含有量が少ないCAでは直径数μm程度のマイクロポアが観察された。② CA上での細胞培養系による評価では、ラット骨髄由来間質細胞、ヒト骨髄由来間質細胞、いずれも低温焼成のCA上でVinculin陽性焦点接着班が顕著にみられ、細胞増殖が促進されていた。また、低温焼成CA上の細胞でERK1/2のリン酸化が顕著であり、インテグリン中和抗体添加でERK1/2のリン酸化と初期接着細胞数が顕著に低下したことから、CAの結晶性や表面性状がインテグリン依存的な細胞接着に寄与している可能性が示された。③ 動物モデルを用いたCAの骨再生能の検討では、ラット大腿骨に骨欠損を作製し、CA他、既存の人工骨補填材を填入し、組織応答について術後7日の切片を作製して解析した結果、術後7日では骨補填材周囲に母床骨から細胞が進入し、とくにCA填入群では増殖細胞のマーカーとERK1/2のリン酸化共陽性細胞が多数みとめられた。
2: おおむね順調に進展している
焼成後の炭酸含有アパタイト(CA)の物性解析、CA上での培養細胞の応答解析から、次年度に予定していた動物モデルでの骨補填材填入実験を並行して行うことで、効率よくCA焼成条件の絞り込みを進めることができたため。本年度の計画に次年度以降の動物実験を加えたことで、焼成条件に依存した細胞の応答性や骨再生時の組織応答性の違いが明らかとなった。
本年度の結果をふまえ、CAの有用性についてさらに解析を進めるために当初の計画通り以下のように研究を進める。(1)引き続きCAの焼成条件と物性についての解析と、CA上での培養細胞の動態解析を行う。(2)填入後7日以降の動物モデルを作製して、骨再生における経時的な組織応答を解析する。(3)インテグリンシグナルの賦活化に、CAに吸着する培地中の血清成分が関与すると推測されるため、特異的な吸着性の有無を複数のロットの牛胎児血清を用いて検討する。以上の計画を遂行して基礎的知見の集積を行う。
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Journal of Bone and Mineral Research
巻: 29 ページ: 1244-1257
10.1002/jbmr.2115.
Anticancer Research
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http://scw.asahi-u.ac.jp/~biochem/index.html