研究課題
本年度は①焼成後の炭酸含有アパタイト(CA)の物性を前年度に引き続き、さらに詳細に解析、②解析する細胞種を増やし、CA上での培養細胞の応答解析、①②の結果から③動物モデルへの移植実験評価を行い、CAの骨再生能について検討、④各種骨補填材に吸着するタンパク質のスクリーニングを計画し、以下の結果を得た。① 焼成温度によって変化する残存炭酸量をFT-IRにより相対量を検討した。さらに、KBr法により絶対量の定量を行っている。② CA上での細胞培養系による評価では、ヒト骨髄由来間質細胞と同様に、脂肪組織由来幹細胞、歯髄由来幹細胞でも低温焼成のCA上でVinculin陽性焦点接着班が顕著にみられ、細胞増殖が促進された。次いで、骨芽細胞様細胞への分化について検討したところ、高温焼成CAおよび水酸化アパタイト(HA)上の細胞でp38 MAPKのリン酸化が顕著であり、ALP活性の上昇、骨芽細胞分化マーカー遺伝子のmRNA発現上昇が顕著にみられ、p38 MAPK経路の阻害剤でこれらが顕著に低下したことから、骨芽細胞様細胞への分化については、CAやHAの高い結晶性とp38 MAPK経路が関与している可能性が示された。③ 動物モデルを用いたCAの骨再生能の検討では、ラット大腿骨に骨欠損を作製し、CA他、既存の人工骨補填材を填入し、組織応答について術後7日から3か月の切片を作製し、免疫染色により解析した結果、術後21日で、骨補填材周囲に骨芽細胞の分化マーカーであるオステオカルシン陽性細胞が多数みられ、また、これらの細胞の多くがリン酸化p38 MAPK陽性であり、in vitroの実験で得た結果を支持する結果を得られた。④ 各種骨補填材に吸着するタンパク質のスクリーニングでは、CAで焼成温度の違いによる吸着タンパク質の泳動パターンに大きな変化は見られなかったが、低温焼成のCAで吸着量が増加する傾向にあった。
2: おおむね順調に進展している
CA上での培養細胞の応答解析を、異なる組織由来の未分化な細胞種についても検討し、細胞接着、増殖に次いで、骨形成に重要なステップである骨芽細胞への分化に関与するMAPK経路の同定を行い、さらに、動物モデルでの骨補填材填入実験を、タイムコースを設けて予定通り進めることができた。各種骨補填材に吸着するタンパク質についても予定通り、スクリーニングを行い、次年度の解析対象を絞ることができたため。
本年度の結果をふまえ、CAの有用性についてさらに解析を進めるために当初の計画通り以下のように研究を進める。(1)引き続きCAの焼成条件および物性と、CA上の培養細胞の動態の関係を様々な細胞種で行う。(2)填入後7日、21日、3か月、6か月、1年と、タイムコースをとった動物モデルを作製して、骨再生における経時的な組織応答を解析する。(3)インテグリンシグナルおよびMAPK経路の賦活化に、CAに吸着する培地中の血清成分が関与すると推測されるため、各種骨補填材を血清中に浸漬し、吸着したタンパク質の電気泳動を行い、特異的な吸着性を示すタンパク質について検討する。以上の計画を遂行して得たデータを論文にまとめる。
http://scw.asahi-u.ac.jp/~biochem/index.html
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