研究実績の概要 |
昨年度までに、歯髄幹細胞培養上清を移植した際の、歯髄・骨髄・脂肪上清の再生能の差は、含まれているTrophic factorの持つ遊走促進能、抗アポトーシス能および血管新生促進能によって生じていることが示唆された。 そこで本年度は、マイクロアレイにて骨髄・脂肪幹細胞よりも歯髄幹細胞に高発現している因子を検索し、その中でwestern blotにてタンパク高発現が認められたのはCXCL14, MCP1, IL6であった。CXCL14は移植細胞が発現しており、BrdU陽性の遊走細胞はCXCR4を発現していているという結果、さらに、PCNAの免疫染色により増殖促進能に差を生じないという結果から、移植細胞により再生組織中に分泌されたCXCL14が、周囲のCXCR4陽性細胞を遊走させるTrophic効果を有することが示唆され、その作用が細胞密度と再生量に影響を与えていることが考えられた。MCP1は移植細胞が発現しており、再生組織中では歯髄動脈あるいは静脈と近い径の血管周囲に多く見られ、BrdU陽性の遊走細胞は発現しておらず、レセプターであるCCR2を発現していた。これらの結果は、MCP1がCCR2を通じた、血管内皮細胞の遊走と血管の成熟により血管新生に関与するTrophic効果を有することを示唆している。今回の組織評価においてIL6陽性細胞数が多ければ、Caspase3陽性細胞は少なく、逆の相関を示すことを明らかとした。再生歯髄において、上清中または再生組織内で分泌されたIL6はアポトーシス抑制のTrophic効果を示すことを示唆している。 以上より、歯髄再生メカニズムには遊走促進能、血管新生促進能および抗アポトーシス能が関与しており、それぞれに関わるTrophic factorの候補にはCXCL14、MCP1、IL6が挙げられることを明らかにした。
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