最終年度までの研究成果で、質量分析で得られたデータと免疫染色(単染色)との組み合わせにより、骨膜由来細胞および骨膜組織に発現しているタンパク質を明らかにしてきた。最終年度では骨膜由来細胞において発現している複数のタンパク質の相互作用を明らかにするために2重免疫染色を行った。まず、タイプ1プロコラーゲンC末端抗体を用いて発現部位をブルーに染色した切片をコントロールスライドとし、引き続き、UACA、EXOSC9、TMX2、β-チューブリンの発現部位をそれぞれの抗体を用いてレッドに染色した。2重染色で2種類のタンパク質が同じ部位に存在する場合、紫色に発色するが、タイプ1プロコラーゲンC末端とTMX2の組み合わせの場合のみ、単染色でブルーに染まった部位が2重染色によって紫色を呈した。前回の研究課題で、骨膜由来細胞の培養上清からサンプルを採取し、2次元電気泳動を行ったとき、プロコラーゲンC末端とTMX2は同じスポットから検出された(2014年印刷公表済み)。2次元電気泳動において同じスポットに存在する複数のタンパク質はパラフィン切片上でも同じ部位に存在することが示唆された。本研究課題の成果は、質量分析と2重免疫染色の組み合わせにより、タンパク質相互作用を明らかにするという方向性を新たに示すものである。 従来の研究では、培養上清をサンプルとし、質量分析を行ってきたが、本研究課題では、細胞質抽出液の質量分析を行った。その結果、Rho GTPase Activating Protein 36 (ARHGAP36)の一部のペプチドを検出したため、候補タンパク質として注目し、骨膜由来細胞の免疫染色を行ってきたが、発現する場合としない場合があることがわかった。細胞の状態によって、結果が異なるタンパク質が存在することが示唆された。
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