研究課題/領域番号 |
26462988
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
西田 尚敬 大阪歯科大学, 歯学部, 講師(非常勤) (70448116)
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研究分担者 |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
岡田 正弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70416220)
本田 義知 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90547259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化チタン / ナノチューブ / DDS |
研究実績の概要 |
TiO2 ナノ粒子は紫外線(UV)照射により活性酸素を発生し、がん細胞を障害できる優れたナノ粒子である。TiO2 は、紫外線や放射線などのエネルギーを加えることで ラジカルを発生する。近年、研究が進み超音波(US)照射で活性酸素が発生することも明らかと なっている。超音波照射による活性酸素発生の癌治療応用の利点は、US が UV に比べ て生体内到達深度が深いということ、皮膚表面での火傷などの副作用が低いということ、そして US 照射の ON/OFF により活性酸素発生の制御が容易である点が挙げられる。これまでの研究により酸化チタンナノチューブ(TNT)が高比表面積と特異的な層状チューブ構造により高い分子吸着能を発揮することや、従来の酸化チタンナノ粒子と比較して、UV照射時における多量のラジカルを発生すること、またラジカルが長寿命であるという知見も得ている。この特徴を活かして、がん治療およびDDSへの応用展開を目的とする。 本年度では、TNTおよび熱処理により結晶生を高めたTNTのHela細胞を用いた細胞毒性試験と酸化ストレスの検出、また、中性溶液における酸化チタンナノチューブ表面へのPEG修飾方法を検討し,水溶化による中性溶液中の分散性向上を試みた。細胞毒性試験により、UV照射時のTNTから発生する活性酸素がHela細胞の増殖を抑制することがわかった。蛍光染色によりTNTから発生する活性酸素がHela細胞に酸化ストレスを与えることも確認できた。そして、PEGとTNTを室温で撹拌するという簡易な方法でTNT表面へPEG修飾することができ、中性溶液中における分散性を向上させることができた。以上のことより、TNTがフォトダイナミクスセラピーに応用できる可能性が見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化チタンナノ粒子をがん治療へ応用するための研究がされており、酸化チタンから発生する活性酸素ががん細胞の増殖を抑制することが知られている。そこで酸化チタンナノ粒子よりもラジカル発生量が多く、ラジカル寿命が長いTNTをがん治療へ応用するための基礎的実験をおこなった。 Hela細胞を5000個/well播種したプレートにTNTを0.001%および0.005%含有させUVを30秒間照射し、24時間培養した。24時間培養後、Cell Counteing Kit にて吸光度を測定し細胞数を計測した、その結果、刺激を加えず培養した場合と比較して、0.001%のTNTを添加して培養すると細胞数が約半分に減少した。また、TNTを添加しUVを照射直後の酸化ストレスを、検出試薬(蛍光染色)を用いて確認した。刺激を加えていない細胞はほぼ酸化ストレスを受けていないのに対して、TNTを添加したものは多量の酸化ストレスが検出された。このことからUVを照射時の活性酸素ががん細胞増殖抑制効果があることがわかり、今後の研究を進めることが可能となった。次に、EPR効果により細胞にTNTを取り込ませるためには、中性溶液中で200nm以下の凝集体にする必要があり親水性の付与および分散性を向上させる必要がある。それを達成するために、TNT表面へのPEG修飾を試みた。様々な有機溶媒を用いてPEG修飾を試みた。IRおよびXPSにてPEG修飾の確認を行った結果、CHCl3とDMSOを混合させた溶媒を用いることで簡易にPEGを修飾することが可能であった。 以上のことより、TNTががん治療に応用できる可能性が示唆され、分散性も向上させる目的もある程度達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験により、TNTをがん治療へ応用できる可能性が見いだされた。今後の計画として、中性溶液で更なる分散性向上を目的として活性酸素発生量が最大となるPEG修飾量の検討をおこなう。さらに超音波による活性酸素の検出量の測定および適切なPEG修飾量の検討もおこなう予定である。また、透過度の高い超波長光を励起光として用いることが可能となれば、励起光の減衰や副反応がなく、必要な点で物質の励起が可能となる。超音波治療と同じく低侵襲ながん治療が可能となると考えられる。そこで、アンモニア水溶液を用いて、TNT表面および層間に窒素をドープし可視光応答化TNTの作製を試みる。達成されればさらに希土類をドープし、アップコンバージョンTNT粒子の開発に着手し、近赤外光によるがん治療への応用展開への知見を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
原材料、実験試薬等を新規購入にて使用する予定であったが、当研究室に在庫があったため優先的に使用した結果、消耗品費が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、材料や試薬の購入費に使用する予定である。
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