生体組織中に、三胚葉系に分化可能な多能性組織幹細胞が存在するという報告があるが、これらの多能性組織幹細胞については、再現性に乏しいなどの問題も多く、存在を疑問視する意見も多い。Ratajczakらはマウス骨髄内に微小な多能性組織幹細胞(VSEL)の存在を報告している。本研究では微小細胞の幹細胞性を確かめるため、マウスからVSEL様の細胞(微小細胞)を骨、および歯髄から分離し、この細胞の幹細胞性を検証した。これまでの検討から、微小細胞は小型(直径6~9μm)で核比の高い細胞であったが、直径5μmの細胞は確認されず、VSELとは異なるサイズであった。表面抗原解析および遺伝子発現解析の結果、微小細胞は既知の組織幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞)やES細胞とは異なる細胞特性を示した。さらに、微小細胞ではVSELで報告されている多能性幹細胞マーカー(Oct4、Nanogなど)の発現は確認されなかった。微小細胞はVSELで報告されているような G-CSFに対する遊走能を示さなかった。一方、VSELと同様に生体内では比較的ゆっくりと増殖していることが示唆された。微小細胞は血球細胞の培養系でごく一部が増殖し、血球系マーカーの発現が認められた。さらに肝障害モデルにおいて、BDSCは障害肝臓内で細胞融合、あるいは分化転換している可能性が示唆された。これらの結果から微小細胞として得られた細胞には何らかの組織幹/前駆細胞が含まれる可能性が考えられたが、詳細についてはさらなる検討が必要と考えられた。
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