歯肉扁平上皮癌由来細胞株Ca9-22細胞に細胞周期評価用蛍光タンパク質Fucci-G1 orangeおよびFucci-S/G2/M greenを同時に安定的に発現するCa9-22-Fucci細胞(前年度作製済み)を用いた顕微鏡下の観察では、限られた視野内の細胞周期の分布を確認することが可能であったが、視野毎の”ブレ“を否定できない。そこで平成28年度は、Ca9-22-Fucci細胞を用いて、抗癌剤の細胞周期に与える影響をフローサイトメトリーにて解析を行った。Ca9-22-Fucci細胞は100%の細胞でFucciを発現しており、フローサイトメトリーを用いた口腔癌細胞の細胞周期を解析に極めて有効なツールであることが判明した。また、各種抗癌剤で細胞を処理すると、すでに知られているような細胞周期の明確な分布の変化が認められた。このことから本研究で作製したCa9-22-Fucci細胞の抗癌剤の有効性評価への応用も期待された。一方、研究立案時に研究対象とした細胞内DNA、RNAセンサーといった自然免疫関連因子を分子生物学的に抑制した実験結果から、抗癌剤が細胞周期に与える影響に対する各分子の明確な影響は認められなかった。しかしながら、有意な差は認められなかったものの、程度に差はあるものの、個々の分子が細胞周期の分布に何らかの影響を及ぼしていたことから、自然免疫関連の複数の因子が抗癌剤依存的な細胞周期の分布の変化に関与している可能性が示唆された。
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