研究課題/領域番号 |
26462996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅野 勇樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80451813)
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研究分担者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
森 良之 自治医科大学, 医学部, 教授 (70251296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 培養軟骨細胞 / 再生前駆細胞 / 分裂速度 |
研究実績の概要 |
カバースリップに軟骨細胞を単層培養したものを移植して軟骨再生を組織学的に観察したところ、移植後経時的に島状の再生軟骨は次第に拡大し、最終的にはその島状の軟骨が癒合して一連の再生軟骨を形成した。よって、特定の培養軟骨細胞が生体内でモノクローナルに増殖し、再生軟骨領域を形成すると推測された。このような島状再生軟骨領域を形成する細胞(軟骨再生前駆細胞)の存在確率を推計した。培養軟骨細胞の直径を約0.1 mmと仮定すると、全培養軟骨細胞中1割程度が軟骨再生前駆細胞であると推計された。次に、軟骨再生前駆細胞の特性を検証するため、PKH26による蛍光標識を行って培養し、分裂速度の早い細胞集団を分取し、遅い細胞集団と比較した。各細胞群の軟骨への分化能を、まずは、in vitroの系を用いて分化誘導を行い、real time PCRによるcol2遺伝子発現やGAGの定量評価、トルイジンブルー染色による組織学的検索などで評価した。分化誘導後のcol2遺伝子の発現は、分裂速度の遅い群に比べ、早い細胞群では有意に高かった。GAG定量評価においても分裂速度の早い細胞群の方が遅い群より有意に高かった。トルイジンブルー染色組織学的検索においても、分裂速度の早い細胞群の方が遅い群よりメタクロマジーが強い傾向を示した。次いでin vivoの評価においては、移植後8週の再生軟骨組織のHE染色、トルイジンブルー染色を行い、組織像を評価した。HE所見では、分裂速度の早い細胞群、遅い群ともに再生軟骨内部でヘマトキシリン好性の領域が観察され、再生軟骨外周にはエオジン好性の線維性領域で構成される外周線維組織が観察され、組織学的に明らかな違いは認められなかった。しかし、トルイジンブルー所見では、分裂速度の速い細胞群では遅い群と比較し、広範にメタクロマジーが観察され、良好なプロテオグリカンの蓄積と軟骨再生が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画通り、 ①移植後に生体内で再生組織を形成する細胞ポピュレーションの推計。 ②再生前駆細胞の濃縮 ③再生前駆細胞による軟骨再生の検証 についておおむね結果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
以下計画通りに推進予定である。④移植母床からの成熟促進の確認:成熟促進因子の評価を行うために、生体からの液性成分や細胞成分の採取が容易な腹腔内移植を検討する。移植後1、2、8、16 週でPPプレートを摘出し、軟骨再生を前項の方法を用いて確認する。さらにPPプレートの回収とともに、ヌードマウス腹腔から腹水を回収し、腹水上清と腹水細胞を遠心分離する。腹水上清ならびに腹水細胞をヒト軟骨細胞と共培養し、一週間培養後、軟骨細胞の遺伝子発現をRT-PCRで評価する。I型コラーゲン、II型コラーゲン、X型コラーゲン、アグリカン、Runx2などを評価し、成熟促進因子の発現、分泌を確認する。⑤成熟促進因子の同定:④項で採取した腹水細胞のmRNAにおいてマイクロアレイ法で発現変化を網羅的に検索し、対照群の腹水細胞と比較して、軟骨の成熟を強力に誘導する遺伝子を同定する。また腹水上清中のタンパク質についてはプロテオーム解析を実施し、同様に対照群の腹水上清と比較して、軟骨の成熟を強力に促進する因子を同定する。⑥再生前駆細胞ならびに成熟促進因子を活用したヒト細胞由来再生軟骨組織の検証:培養ヒト軟骨細胞を②項で検討した方法で分取し、③項に準じ成熟促進因子を含有した培養液でin vitroで培養し、軟骨再生を誘導する。評価方法は③項に準じる。比較対照には、再生前駆細胞を用いない群や成熟促進因子を用いない培養群などを用いる。⑦ビーグルを用いた軟骨再生モデルでの実証:ビーグルの耳介軟骨より軟骨細胞を採取し、③項の分取法で細胞を準備しPLLA多孔体足場素材 に投与し、成熟促進因子を添加した培養液で培養し、組織成熟を図る。③項に準じ、軟骨再生を評価するとともに、細胞を採取したビーグルで背部皮下移植モデルを作製し、8、24週で移植組織を摘出する。評価は③項に準じる。
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次年度使用額が生じた理由 |
FACSの解析が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度にすれ込んだものに使用。
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