本研究の目的は、生体内で再生組織を構成する再生前駆細胞を同定して選別するとともに、生体内の修復力・再生力のメカニズムを明らかにし、両者を活用して軟骨再生組織の移植前成熟を実現し、再生組織の特性を飛躍的に向上させることである。 まず、植母床からの成熟促進の確認のために、成熟促進因子の評価を行うために、生体からの液性成分や細胞成分の採取が容易な腹腔内移植を検討した。培養マウス軟骨細胞を播種したPPプレートを ヌードマウスの腹腔内に移植。移植後1、2、8、16 週でPPプレートを摘出し、軟骨再生を前項の方法を用いて確認。さらにPPプレートの回収とともに、ヌードマウス腹腔から腹水を回収し、腹水上清と腹水細胞を遠心分離。腹水上清ならびに腹水細胞をヒト軟骨細胞と共培養し、一週間培養後、軟骨細胞の遺伝子発現をRT-PCRで評価。I型コラーゲン、II型コラーゲン、X型コラーゲン、アグリカン、Runx2などを評価し、成熟促進因子の発現、分泌を確認した。 次に、成熟促進因子の同定を行った。前項で採取した腹水細胞のmRNAにおいてマイクロアレイ法で発現変化を網羅的に検索し、対照群(PPプレートのみを移植)の腹水細胞と比較して、軟骨の成熟を強力に誘導する遺伝子を同定する。また腹水上清中のタンパク質についてはプロテオーム解析を実施し、同様に対照群の腹水上清と比較して、軟骨の成熟を強力に促進する因子を同定した。 さらに、再生前駆細胞ならびに成熟促進因子を活用したヒト細胞由来再生軟骨組織の検証を行った。培養ヒト軟骨細胞を、成熟促進因子を含有した培養液でin vitroで培養し、軟骨再生を誘導。比較対照には、再生前駆細胞を用いない群や成熟促進因子を用いない培養群などを用いた。
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