研究課題/領域番号 |
26462998
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
野口 誠 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50208328)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 顎骨浸潤 / 破骨細胞分化 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌組織における、制御性T細胞regulatory T cell(Treg)を介したミエロイド系抑制性細胞myeloid derived suppressor cell(MDSC)の制御機構を解明するために、マウス由来口腔扁平上皮癌細胞株NRS1と同種マウスC3H/HeN系を用いたシンジェニックマウス口腔癌モデルを用い、担癌マウスより腫瘍組織、所属リンパ節である顎下リンパ節や末梢リンパ節、脾臓、骨髄などの様々な組織を採取し磁器分離により各種免疫細胞を分離回収しin vitroでの実験系による免疫学的解析を行ったところ、マウス口腔癌細胞株NRS1担癌マウスでは、腫瘍移植後の比較的初期の段階で腫瘍組織内のTregが増加し、MDSCは比較的腫瘍サイズが増大したころに増加してくることが確認された。注目すべき点は、腫瘍組織内に浸潤しているCD4陽性細胞中の50%以上がTregであることで、このことは、腫瘍内でTregが極めて中心的な働きをしており、Tregを介した他の細胞集団への制御機構が、様々な免疫反応において腫瘍な役割を果たしている可能性を示唆するものである。そこで、これまでに以下に示す様々な研究結果を見出すことができた。1.腫瘍内のTregの細胞表面上でのTRAILやFasLなどのdeath ligandの発現が増強している。2.腫瘍内のMDSCを含めたCD11b陽性細胞の細胞表面上でのDR5(TRAIL-R2)やFas(CD95)などのdeath receptorの発現が増強している。3.腫瘍細胞から分離したTregによる、骨髄中から分離したCD11b陽性細胞のアポトーシスが誘導された。4.上記のアポトーシスの誘導には、中和抗体を用いた解析でFas/FasLを介してアポトーシスであった。5.NRS1担癌マウスの骨髄、脾臓、腫瘍よりソーティングでCD11b、Gr-1陽性細胞を回収し、各々をGM-CSF、IL-4添加のOC分化培地で培養したところ、OCへの分化がTRAP assayで確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析結果から、マウス口腔癌モデルの腫瘍組織内の制御性T細胞regulatory T cell(Treg)はミエロイド系抑制性細胞myeloid derived suppressor cell(MDSC)の出現をコントロールしている可能性が示唆された。さらにそのメカニズムとしては、TRAIL/TRAIL receptorを介してアポトーシスの誘導によることが確認されたことから、Tregは腫瘍内に比較的初期から増加し、MDSCは腫瘍の増大とともに増加しているメカニズムの確認、腫瘍進行期においてはMDSCが腫瘍微小環境での免疫抑制機構の中心的な役割を果たしており、今後の研究の遂行にあたっては、標的となる免疫細胞の役割が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これらをふまえ、ミエロイド系抑制性細胞myeloid derived suppressor cell(MDSC)を標的とした治療実験を以下のように計画している。1.Tregの選択的除去をNRS1担癌マウスにおいて継続的に行い、長期間のTregの除去が移植腫瘍の増殖抑制を維持するかどうか検討する。Tregの選択除去には従来から低用量シクロフォスファミドやPC61抗体を用いた方法が報告されている。しかし、本研究では、米国でFDA認証済みで、CD25発現細胞に対して高い障害活性を示すと報告されているdenileukin diftitox(DT)を用いる。2.長期間のTregの選択的除去が、腫瘍進行期におけるMDSCの増加を加速させるのか、MDSCの出現頻度をモニタリングすることで、腫瘍進行期におけるTregの除去と、MDSCの増加について評価する。3.Tregの除去により腫瘍組織内でMDSCが増加する場合、その増加したMDSCを同時に選択的除去する方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミエロイド系抑制性細胞myeloid derived suppressor cell(MDSC)や制御性T細胞regula tory T cell(Treg)を標的とした動物実験として、抗体や抗がん剤を使用した解析を当初行う予定であったが、本研究の進捗状況を考慮して動物実験の前に当初の実験計画で予定した内容よりもさらに多くのin vitroの解析を優先的に行うことが必要があると判断した。そのため動物実験で使用するマウスの購入、試薬の購入、備品の購入、飼育に関わる一切の支出を次年度以降に使用する計画としたため翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画となった。
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次年度使用額の使用計画 |
ミエロイド系抑制性細胞myeloid derived suppressor cell(MDSC)や制御性T細胞regulatory T cell(Treg)を標的とした動物実験として抗Gr-1抗体、5-FU、ゲムシタビンなどの化学療法剤を使用したMDSCに対する選択的除去の効果を検討する。本研究では、口腔粘膜に発生する扁平上皮癌の顎骨浸潤という特異性に着目してnitrogen含有bisphosphonate製剤の使用も計画している。
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