多臓器の癌腫と異なり、口腔粘膜に発生した扁平上皮癌は、早期に顎骨へと浸潤する。この為、顎骨を含めた顎口腔領域の広範な切除による極めて侵襲の高い治療が必要とされることが多く、顎口腔領域の器官や機能を大きく損なうという問題がある。そこで、口腔癌においては、顎骨浸潤のメカニズムに着目した研究による新たな治療戦略の開発が重要と考えられるが、口腔癌の顎骨浸潤については、いまだに解明されていない点が多い。そこで申請者らは、口腔扁平上皮癌組織における顎骨浸潤のメカニズムを破骨細胞分化と免疫応答という観点から解明することを本研究の目的としたもので、具体的な研究計画として、口腔扁平上皮癌組織における、制御性T細胞(Treg)を介したミエロイド系抑制性細胞(MDSC)の制御機構を解析するため、マウス由来口腔扁平上皮癌細胞株NR-S1Kと同種マウスC3H/HeN系を用いたシンジェニックマウス口腔癌モデルを用い、担癌マウスより腫瘍組織、所属リンパ節や末梢リンパ節、脾臓、骨髄などの組織を採取し、セルソーティングおよび磁器分離により各種免疫細胞を分離回収しin vitroでの実験系による免疫学的解析、NR-S1K担癌モデルに対するTregおよびMDSCを標的とした治療実験を検討した。その結果、1.腫瘍組織では、CD4陽性T細胞中にFoxp3陽性のTregが、実に50%以上の割合で腫瘍内に浸潤しており、口腔癌組織ではTregが免疫抑制機構の中心的な役割をしていること、2.腫瘍から分離したTregは、骨髄前駆細胞のOCへの分化を抑制すること、3.腫瘍内に浸潤しているTregは細胞表面上にCTLA-4を強発現すること、4.腫瘍内 Tregを介したOC分化抑制には、CTLA-4が重要な役割を果たしていることが、CTLA-4の中和抗体を用いた実験で確認された。
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