研究課題/領域番号 |
26462999
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
佐野 和生 福井大学, 医学部, 教授 (20145270)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 扁平上皮癌 / 血管新生阻害剤 / 背部皮下移植 / ヌードマウス |
研究実績の概要 |
高齢者の異時性口腔癌制御を目的として、血管新生阻害剤を用いた局所注入療法についてヌードマウス口腔扁平上皮癌背部皮下移植モデルを用いた実験的検討を行った。平成26年度には、まず、九州大学口腔病理学教室より供与を受けた口腔扁平上皮癌細胞株の細胞培養、細胞の分子生物学的特徴の解析を行った。ベバシズマブはVEGF-Aに結合して血管新生を抑制するため、ヌードマウスに口腔扁平上皮癌株を移植する前に、移植する口腔扁平上皮癌細胞株にVEGF-Aが発現しているか、mRNAレベルで口腔扁平上皮癌細胞株におけるVEGF-Aの発現量をreal-time PCRにより解析した。ヒト角化細胞HakaTをコントロールとして使用し、口腔扁平上皮癌細胞株としてHSC-2、HSC-3、HSC-4、MISK81-5、SASを用いた。すべての細胞でVEGF-Aの発現が確認できた。その中でもHSC-3においてVEGF-Aの発現量が最も高かった。そこで、HSC-3をヌードマウスに移植し、ベバシズマブ投与前の予備実験を開始した。ヌードマウス癌背部移植モデルを作製し、HE染色による組織学的評価、Ki-67免疫染色による腫瘍細胞の検討を行ったところ、腫瘍細胞の密度が予期したものより低いため、以降、細胞密度を高める目的で詳細な検討を行う必要が生じた。一方、腫瘍周囲への局所注入療法薬の分布を調べるため、インジゴカルミンを腫瘍周囲に注入した。その結果、腫瘍基部が特に青染したため、局所注入療法が有効であることが示唆された。 平成27年度には、細胞密度の高い癌背部移植モデルを確立し、実験を行った。現在、標本をパラフィン包埋し、今後、切片作製、免疫染色の予定である。舌への癌移植モデルについては、予備実験で50%の生着率であったため、100%にすべく再度予備実験を行う予定である。また、舌において実験に適した移植部位の検討も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ベバシズマブはVEGF-Aに結合して血管新生を抑制するため、ヌードマウスに口腔扁平上皮癌株を移植する前に、移植する口腔扁平上皮癌細胞株にVEGF-Aが発現しているか、mRNAレベルで口腔扁平上皮癌細胞株におけるVEGF-Aの発現量の解析を行った。ヒト角化細胞HakaTをコントロールとして使用し、口腔扁平上皮癌細胞株としてHSC-2、HSC-3、HSC-4、MISK81-5、SASを用いた。すべての細胞でVEGF-Aの発現が確認できた。その中でもHSC-3においてVEGF-Aの発現量が最も高かった。そこで、HSC-3をヌードマウスに移植することとした。 平成27年度にはヌードマウス背部皮下に口腔扁平上皮癌を移植した。しかしながら、初回実験では腫瘍細胞の密度が低かったため、腫瘍細胞の密度を高める目的で種々の背部皮下移植法を検討した。その結果、腫瘍細胞密度の高いモデルを作製することができた。 そこで、このヌードマウス背部皮下口腔扁平上皮癌移植モデルを用いて、抗腫瘍効果を有し、正常組織への副作用が少ないベバシズマブの濃度を決定したうえで、ベバシズマブの局所注入療法を行い、腫瘍体積測定を行った。血管新生阻害剤の投与スケジュール終了後、周囲組織とともに腫瘍を摘出し、パラフィン包埋を行った。今後、組織学、免疫組織学的検討を行う予定である。 一方、ヌードマウス舌への口腔扁平上皮癌移植については、舌への癌生着率が50%であったため、生着率を100%にできるよう手法を検討する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にはパラフィン切片を作製し、HE染色標本において画像解析による腫瘍壊死面積測定、増殖細胞、微小血管やアポトーシスのマーカーを用いた免疫組織学的検討を行い、血管新生阻害剤の効果を組織学的に明らかにする。また、腫瘍体積結果も併せて統計学的な検討も行う。 ヌードマウス舌への口腔扁平上皮癌移植については、100%となるよう手法を検討する。また、舌のどの部位が最も移植に適しているかについての検討も必要となる。ヌードマウス舌への口腔扁平上皮癌移植モデルを確立後、血管新生阻害剤の口腔内への安全な局所投与法についても検討し、血管新生阻害剤の投与スケジュール終了後、周囲組織とともに腫瘍を摘出し、パラフィン包埋を行う。口腔扁平上皮癌舌移植モデルについてもパラフィン切片を作製し、HE染色標本において画像解析による腫瘍壊死面積測定、増殖細胞、微小血管やアポトーシスのマーカーを用いた免疫組織学的検討を行い、血管新生阻害剤の効果を組織学的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にはヌードマウス背部皮下に口腔扁平上皮癌を移植した。しかしながら、初回実験では腫瘍細胞の密度が低かったため、腫瘍細胞の密度を高める目的で種々の背部皮下移植法を検討した。その結果、腫瘍細胞密度の高いモデルを作製することができた。 このヌードマウス背部皮下口腔扁平上皮癌移植モデルを用いて、ベバシズマブの局所注入療法を行い、腫瘍体積測定を行った。血管新生阻害剤の投与スケジュール終了後、周囲組織とともに腫瘍を摘出し、パラフィン包埋を行った。平成27年度にパラフィン切片を作製し、組織染色、免疫染色を行う予定であったが、そこまで至らず、結果的に免疫染色試薬を次年度に繰り越すこととなったため、繰越金が生じた。また舌への癌移植についても生着率が50%であったため、舌への癌移植モデルでの検討を次年度とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には、ヌードマウス背部皮下口腔扁平上皮癌移植モデルのパラフィン切片を作製し、免疫染色を行う予定であるため、増殖能、腫瘍血管マーカー、アポトーシスなどの免疫染色試薬の購入が必要である。 また舌への移植モデルについても平成28年度に行う予定のため、ヌードマウスの購入、腫瘍細胞培養のための試薬、血管新生阻害剤、先述の各種免疫染色試薬の購入が必要となる。
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