癌の増殖や転移の過程において血管新生は重要な役割を果たしている。ベバシズマブは血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)の働きを阻害することにより腫瘍血管新生を抑制する抗VEGF抗体である。臨床的には静脈内投与で使用されているが、全身疾患を有する患者に対する静脈内投与は副作用を増強するとされる。一方、腫瘍に直接作用する抗癌剤の局所投与は全身の副作用を軽減し、抗腫瘍効果を強めるとの報告がある。しかしながら、口腔扁平上皮癌(OSCC)周囲へのベバシズマブ局所投与の効果については明らかにされていない。 今回、OSCC移植マウスモデルを用いてベバシズマブ局所投与の効果を検討した。OSCC細胞株HSC-3を背部皮下に移植した生後5週齢のBALB/cヌードマウスを用いて実験を行った。腫瘍周囲の2方向からベバシズマブ(10 mg/ml)を週2回4週間、腫瘍周囲に局所投与した。投与開始4週後に腫瘍を摘出し、生理食塩水投与群、無処理群と比較検討した。腫瘍の組織標本を用いてCD31とalpha smooth muscle actin (αSMA)に対する免疫組織化学的検討、TUNEL法によるアポトーシスの検討を行った。 生理食塩水投与群、無処理群と比較し、ベバシズマブ投与群では腫瘍体積が有意に抑制された(p<0.01)。また、ベバシズマブ投与群ではCD31陽性血管およびαSMA陽性血管の密度が有意に減少し(p<0.01)、腫瘍の未熟な血管と成熟した血管の双方とも抑制された。さらに、ベバシズマブ投与群ではアポトーシス細胞数が有意に増加した(p<0.01)。 OSCC周囲へのベバシズマブ局所投与により腫瘍血管新生の抑制、アポトーシスの誘導がみられたことから、腫瘍周囲へのベバシズマブ局所投与の有用性が示唆された。
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