研究課題
歯髄細胞の異なる株間において、これらの細胞からのiPS細胞誘導の効率に関与する因子として、DLX4遺伝子の関与とこの遺伝子が高発現している細胞は高効率でiPS細胞を誘導することが可能であることをこれまでの研究で明らかにしてきたが、この遺伝子を高発現している歯髄細胞株と低発現の歯髄細胞株とで、DNAマイクロアレイを行った結果、ある特定の因子が候補として挙がった。また、DLX4の発現は、歯髄細胞をTransforming Growth Factor(TGF)-betaで処理することによって発現を抑えることができることを見出しており、これらの歯髄細胞株にたいして、TGF-betaで処理した際に、どの情報伝達系が活性化されるかを検討するため、イムノブロット法にて検討した結果、ERK、p38MAPK、AKTなどの活性化が示された。そこで、MAPK、AKT経路などの各種阻害剤を用いて処理したのちに、TGF-betaで刺激を行って、DNAマイクロアレイにて特定された因子の発現を検討した結果、AKT経路の関与を示唆する所見が得られた。さらに、歯髄細胞はもともとNFkBの活性化が認められたが、このNFkBの阻害剤によって歯髄細胞を処理したところ、TGF-beta処理によって、特定された因子の発現に影響を及ぼすことが示唆された。さらに、これらDLX4高発現歯髄細胞株とDLX4低発現歯髄細胞株で、TGF-betaにより処理することで、IL-24の誘導に影響が及ぼされることも示唆された。このサイトカインの発現の意義については今後の研究課題としていきたい。