これまでBRONJの発症メカニズムの解明にはビスフォスフォネート(BP)の直接作用対象である破骨細胞に関する研究が重点的になされてきているが、その発生機序は未だ不明である。筆者らはBRONJの発症メカニズムにおいて骨芽細胞の骨形成作用の抑制が重要ではないかという仮説を立てた。当初の予定ではヒト初代歯肉細胞をBP存在下で培養予定あったが培養が上手く行かなかったため断念した。骨芽細胞をBP存在下で培養してその上清のELISA解析をおこなった。まずマウス骨芽細胞MC3T3をBP(4μM,8.7μM,25μM,50μM)で3日間培養して細胞数をカウントしたところ,BPは濃度依存的にMT3T3細胞の増殖を抑制した。次にMT3T3細胞をBP(4μM,8.7μM)添加培地で3日間と6日間培養して,培地をELISA解析したところ添加3日目の上清中のRANKLの産生が増加し,M-CSFおよびオステオポンチンの産生が減少した。また6日目の上清中のIL-34の産生が減少した。この中で特にM-CSFに注目した。骨芽細胞が分泌するM-CSF(macrophage colony-stimulating factor)は,破骨細胞前駆細胞の形成とその後の破骨細胞分化において必須の因子である。本実験の結果は,骨芽細胞がBP存在下でM-CSFの産生抑制をきたすことが明らかとなりその結果,破骨細胞前駆細胞の形成の抑制、さらに破骨細胞への分化抑制を生じることがBRONJ発症機序の一因であることが示唆された。
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