研究実績の概要 |
日本近海で採取した海洋生物から抽出した生理活性物質の,扁平上皮癌細胞対する細胞毒性を指標に,活性の高い物質を選択した.すなわち海洋生物の抽出物をメタノール/エタノール抽出溶媒によりヘキサン画分,酢酸エチル画分,水画分に分配し,抽出された化学物質を精製した(名古屋大学 小鹿研究室担当).当教室で確立した無血清培養法を用いて,この物質の細胞増殖に及ぼす影響を検討した.サンプルはH1~H14,M1~M14の計28種類でまずは最終濃度10μg/ml,1μg/ml,0.1μg/mlでスクリーニングアッセイを3回行った.M12に高い活性が確認されたため,さらに濃度を細かく設定しIC50を測定した.IC50は0.028μg/mlであった.続いてサンプルKS-I-90-29~42の14検体について最終濃度10μg/ml,1μg/ml,0.1μg/mlでアッセイを行った.KS-I-90-37,90-40,90-42に高い活性が認められたため,さらに最終濃度を0.1,0.25,0.5, 0.75,1μg/mlに細かく設定し再検討した.その結果,スクリーニングアッセイと同様に3種類とも強い活性を示し,それぞれのIC50は0.027,0.024,0.032μg/mlであった.今後,質量解析装置を用いてこれらの活性の高い物質の構造解析を行い,未知の物質であるかどうかの同定を予定する(名古屋大学 小鹿研究室担当).未知の物質であれば,誘導体の生成を行うだけでなく大量合成を行い動物実験にて抗腫瘍効果を検証する予定である.
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