研究課題/領域番号 |
26463008
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 康正 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (40423371)
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研究分担者 |
栗原 英見 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (40161765)
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯学 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
顎骨より採取した骨髄液中に存在する骨髄細胞を含む骨髄液を無血清培地にて初代培養を試み、先行研究で開発した無血清培地を用いたところ、十分な増殖能を有する骨髄細胞を培養することが可能であった。詳細な培養条件の検討は、臨床試料を用いた初代培養では難しいことから、樹立骨髄由来間葉系幹細胞 (MSC) を使用して検討を行った。
骨髄由来MSC細胞にE6、E7、hTERTあるいはbmi-1遺伝子をレトロウィルスにより導入して不死化を行ったMSC細胞株を用い、ヒトES細胞用無血清培地からFGF-2とヘパリンを除いたhESF7培地を使用して各種増殖因子の増殖への影響を検討した。FGF-2、TGF-β1およびヘパリンが増殖能に最も関与していることが明らかとなり、MSCの細胞増殖が十分得られる既知の因子からなる無血清培養条件が確立できたと考えられる。hESF9、hESF10 およびPOWEREDBY10の各培養条件で培養を行ったMSCでは、MSCマーカーであるCD90 (Thy-1)、CD105およびCD44、CD73タンパク陽性細胞の発現が認められた。またCD34およびCD45陽性細胞はいずれの培養条件でも認められなかった。細胞の品質規格においては、大部分の細胞がCD90、CD105、CD44、CD73陽性、CD31、CD45陰性であり、品質管理においては、血液、細胞養液、培養細胞における種々の検査を行うことにより、安全性の確保に努め、細胞の均一性および種々の抗原性、感染性因子の除去は可能であったと思われる。
空調管理をはじめ、種々の研究機器、個別化した培養器具およびインキュベータの使用により、徹底した管理体制のもとで研究を行った。これらの管理体制、培養技術も年々充実しており、厳格な細胞の品質管理が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
顎骨由来の間葉系骨髄幹細胞の未分化状態を維持する培養条件の確立については、種々の遺伝子発現、細胞の増殖能について無血清培養下での条件では、概ね確立しており、細胞の品質管理が可能である体制にはあるものの、将来的に幹細胞を利用した再生医療を実施するためには、in vitro、in vivoでの検討がまだまだ充分ではない。安心・安全が大前提であるため、抗原性、病原性を持つ感染因子の除去や骨髄由来幹細胞におけるin vitro、in vivoでのさらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
顎骨由来の間葉系骨髄幹細胞を利用した再生医療を実施するために、まずは細胞の品質管理を行い、品質規格を評価するシステムを確立することは必要不可欠である。今後、in vitro、in vivoでの分化制御機構、形質転換を検討して、癌遺伝子、癌抑制遺伝子の発現を解析し、ヌードマウスを用いた造腫瘍性の有無を検討する必要がある。
ヒト顎骨骨髄由来の幹細胞を骨髄幹細胞マーカーの発現、細胞未分化マーカーを用いた未分化性を検討し、その分化制御機構を解明し、分化をコントロールする必要がある。施設面の環境整備を充実させ、徹底した細胞の品質管理を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
間葉系骨髄幹細胞の未分化状態を維持する培養条件を種々の遺伝子発現、細胞の増殖能についての検討することについて、以前より研究を続けているため、消耗品の使用を抑えることができたこともあるが、当初予定していた新たな試薬、実験機器の購入およびヌードマウスを使用した造腫瘍性の検討を行うことが困難であったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進行により、次年度は培養試薬、遺伝子実験用試薬等の消耗品についてかなりの支出が予想される。また、それを解析するための機器の購入ならびに動物実験を行う。その結果に伴い、研究成果発表や資料収集のための旅費として使用し、また研究図書の購入、論文投稿および別刷り費用に使用する。
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