研究課題/領域番号 |
26463013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林田 淳之介 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80432920)
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研究分担者 |
中村 誠司 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60189040)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔扁平苔癬 |
研究実績の概要 |
口腔扁平苔癬(OLP)は、口腔粘膜に角化異常を伴う慢性炎症性疾患であり、基底膜直下へのT細胞を主体としたリンパ球浸潤を特徴とする。今回ヘルパーT (Th)1、Th2に加えて、近年自己免疫疾患や慢性炎症疾患において病態形成との関連が報告されているTh17や制御性T細胞(Treg)に注目し、それらのThサブセットについても検索を行った。 【材料および方法】当科を受診した両側頬粘膜に発症した網状型を呈したOLP患者32例(男性6例、女性26例、平均年齢60.9歳)および健常者22例(男性4例、女性18例、平均年齢56.8歳)を対象とした。これらの症例の生検材料を用いて、real-time PCR法および免疫組織化学染色法により、それぞれのThサブセットが産生するサイトカインおよび特異的な転写因子の発現について検索を行った。 【結果】OLP患者は健常者と比較して、Th1、Th2およびTh17タイプの関連分子の発現が亢進していたが、Tregタイプについては有意差を認めなかった。昨年より症例が増えたが、統計学的な差は認めなかった。Th17について注目すると、IL-17は上皮直下に浸潤したリンパ球に発現の亢進を認め、IL-23は角化亢進が著明な基底層に加え上皮全層および上皮直下のリンパ球に発現の亢進を認めた。またTh2タイプのIL-33は粘膜基底層に発現を認めた。しかしこの発現細胞の同定には至っていない。 【考察】これらの結果より、Th1に加えTh2とTh17の発現がOLPの病態形成に関与しており、さらにIL-23の発現を誘導することで、上皮の角化が亢進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年よりも生検組織の入手は増加したが、予想した患者数より若干の遅れを認める。外来患者来院頻度に伴うものであるため、本年度に期待しているところである。 サイトカインの解析にも、その母数が影響しているのか、主だったサイトカインで統計学的有意差が出ていないところがあるが、傾向としては概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当科の医局員の協力もあり、免疫組織化学染色の方法がアップデートされてきた。2~3重染色が可能となってきており、主だったサイトカインの発現細胞の同定に有用かと考えている。 また、組織で発現を確認するサイトカインに関しては、論文での報告をもとにさらなる検索をすすめ、わらわれの方向性と既発表論文の方向性の差違を検討していく予定である。 新たな染色の手法と、経年的なサンプル収集が多くなれば、口腔扁平苔癬の原因となるサイトカインの幾つかが導き出せると考えており、次年度に向けて、このままのペースで研究は推進していくように考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集予定だったサンプル数が予定よりも少なかったため、消耗品の購入と差が出たから。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、予定通りのサンプル収集が見込まれているので、そこで使用予定とする。
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