研究課題
口腔扁平上皮癌(OSCC)の浸潤・転移の分子機構を明らかにするために、本研究ではzinc finger E-box-binding homeobox (ZEB)1およびZEB2を介した上皮-間葉転換(EMT)に着目し研究を行った。これまでの研究(平成26~27年度)により、EMTの細胞形質を有する口腔扁平上皮癌高転移株SQUU-B細胞はZEB1, ZEB2の発現量が他のOSCC細胞株と比較して、有意に高いことが示された。このことから、ZEB1とZEB2がOSCCのEMT形質の獲得に寄与している可能性が示されたため、本年度は以下の研究を行い、下記の新知見が得られた。①ZEB1とZEB2の発現を制御しているmicro RNA(miR)に着目し、miRNAマイクロアレイを行ったところ、SQUU-B細胞で発現が低かったmiR205を候補分子として抽出した。②miR205はSQUU-B細胞において発現量が最も低く、低転移株であるSQUU-B細胞、HSC-2細胞、正常皮膚角化細胞株(HaCat)では発現量が高かった。③SQUU-B細胞において、miR205mimicを用いmiR205を過剰発現させたところ、E-cadherinの発現増加、ZEB1とZEB2の発現減弱を認めた。④ΔNp63をSQUU-B細胞に過剰発現したところ、miR205とE-cadherinの発現量増加、ZEB1とZEB2の発現量減少を認めた。以上の結果から、ΔNp63の発現減弱によりmiR205の発現も減弱することによりZEB1とZEB2の発現を増加させ、OSCCのEMTに関与しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に記載した予定どおりに研究を遂行できているためである。
①miR205が直接的にZEB1とZEB2の発現を制御しているかを検討するために、ルシフェラーゼアッセイを行う。②miR205を発現しているOSCC細胞株を用いて、miR205に対するinhibitorを添加しZEB1とZEB2の発現ならびに分化マーカーの発現を検索する。③ZEB1とZEB2のノックダウンがOSCC細胞の遊走、浸潤、転移能に与える影響について検索する。
昨年度に購入した試薬等の量が十分残っており、本年度新たに購入する必要性がなかったため。
次年度は論文投稿費等が必要となるため、差額を投稿費の不足分に補填したいと考えている。また、次年度は新たに試薬が必要となるため、そちらにも使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Oncology letters
巻: 11 ページ: 3369-3376
http://www.omfs1.dent.kyushu-u.ac.jp