研究実績の概要 |
根治的治療として手術を計画し術前治療として化学放射線治療(以下「術前治療」)を行った口腔がん患者を対象に術前治療前から術後経口摂取開始までの期間に対し、4つの時期(A:入院後で術前治療開始前、B:術前治療中の口腔粘膜炎が重篤な時期、C:手術直前の口腔粘膜炎が鎮静化している時期、D:手術が終了し経口摂取開始後の時期)を定めて唾液を採取し、次世代シーケンサーによる分析に供した(以下PT群)。また術前治療を行わず手術のみを施行した患者(以下non PT群)の手術前(Aの時期に相当)、手術後(Dの時期に相当)の検体を対照群とした。 平成30年度においてはPT群、non PT群それぞれのD時期の検体どうしをLinear Discriminant Analysis Effect Size (LEfSe)解析により比較分析を行い、PT群とnon PT群それぞれに特徴的なOperational taxonomic unit(OTU:解析操作上の菌種)を抽出した。 <結果>PT群(術前治療を行った群)においては、non PT群(術前治療を行わなかった群)と比較して、Scardovia wiggisiaeとOribacterium asaccharolyticumが高い構成比率で検出された。Scardovia wiggisiaeはう蝕との関連が指摘されている菌種(Kressierer,C.A., et al, J Oral Biosci. 2017 Aug; 59(3): 135ー141)でもあることから、口腔がん患者に対して化学放射線治療を施行した場合には、患者のう蝕リスクが高まるおそれがあることが示唆された。
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