研究課題
本研究は、申請者等が過去に樹立した不死化エナメル上皮腫細胞株AM-1およびAM-3を用いて、エナメル上皮腫の腫瘍上皮細胞と間質線維芽細胞との相互作用(クロストーク)が本腫瘍細胞の細胞活性ならびに骨吸収破壊メカニズムに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.平成26年度は,エナメル上皮腫がIL-1α分泌を介して間質線維芽細胞と相互的に働き、腫瘍の浸潤発育に有利な微小環境を構築する可能性を明らかにした.平成27年度は,腫瘍細胞と間質細胞との相互作用を解明するため,マトリゲル上培養法やDouble-Layered コラーゲンゲル半球培養法(DL-CGH法)による三次元培養実験を行った.その際、緑色蛍光蛋白質(GFP)を遺伝子導入したAM-1およびAM-3と赤色蛍光蛋白質(DsRED)を遺伝子導入した線維芽細胞株HFF-2を作成した.これらを共培養することで、腫瘍細胞と間質細胞の相互作用が腫瘍細胞の集団的な動態に与える影響を評価することを可能とした.平成28年度は,DL-CGH法で腫瘍細胞と線維芽細胞を共培養し、それぞれが互いに集団的に引き合う特異な細胞遊走形態を観察した.このことから、エナメル上皮腫の浸潤形態の変化には間質線維芽細胞が関与している可能性が示された.平成29年度は、異なる腫瘍型由来のエナメル上皮腫細胞株であるAM-1とAM-3の挙動をDL-CDH法で比較した.その結果,濾胞型由来であるAM-3単独では細胞間接着を保ったまま平滑な浸潤辺縁を維持ながら浸潤したのに対し、線維芽細胞存在下では複数の腫瘍細胞が細胞間接着を維持したまま浸潤突起を形成しながら周囲に浸潤する様子が伺えた.一方,AM-1は腫瘍細胞が散在性に拡散し、エナメル上皮腫の本来の浸潤様相とは違う挙動を呈したが、いずれも、その浸潤突起の先端には線維芽細胞が存在し、腫瘍細胞の浸潤を誘導する様子が認められた.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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