研究課題/領域番号 |
26463024
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
里見 貴史 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70276921)
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研究分担者 |
河野 通秀 東京医科大学, 医学部, 助教 (00421066)
近津 大地 東京医科大学, 医学部, 教授 (30343122)
渡辺 正人 東京医科大学, 医学部, 講師 (40349460)
虻川 東嗣 東京医科大学, 医学部, 助教 (50453717)
藤川 考 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (60322468) [辞退]
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 教授 (90276709)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 顎骨浸潤 / 腫瘍関連マクロファージ / 口腔癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、血管新生や破骨細胞の分化/ 骨吸収の相互作用に極めて密接に関連する腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophages: TAM)の顎骨破壊部における微小環境部における役割を解析し、その制御機構であるCSF-1/CSF-1Rシグナルに着目したin vivo実験を行い、新たな顎骨浸潤・骨破壊に対する治療法(制御法)の確立を目指すことである。この治療法は、従来のBP製剤のように成熟した破骨細胞をターゲットにするものではなく、分化前の前破骨細胞やTAMをターゲットに癌の増殖および骨浸潤を制御するため、骨組織における蓄積がなく、現在BP製剤使用で問題になっている顎骨壊死を回避できると推測される。平成26年度、in vitro の実験で、PTHrP mRNA ,COX-2 mRNA発現量の異なる2種類のマウス扁平上皮癌(NR-S1細胞株,SCCⅦ細胞株)を用いてC3H/Heマウスにおいて顎骨浸潤モデルを作製した。PTHrP mRNAの発現量は NR-S1細胞株がSCCⅦ細胞株の約3倍、COX-2 mRNAの発現量はSCCⅦ細胞株がNR-S1細胞株の約2倍であった。平成27年度はin vivoの実験で、マウス扁平上皮癌(NR-S1細胞株,SCCⅦ細胞株)を用いて、C3H/Heマウスにおいて顎骨浸潤モデルを作製し、異なる2種類のマウス扁平上皮癌株(SCCⅦ、NR-S1)で腫瘍増殖や顎骨浸潤能の違いについて比較検討した。また、サンプル(マウス顎骨)にて、それぞれの腫瘍や顎骨浸潤部におけるPTH, COX-2, CD68, CD163, CD86, F4/80, CSF-1Rの発現を免疫組織化学的手法にて解析した。今後は、この顎骨浸潤モデルを用いてCSF-1/CSF-1RシグナルをターゲットにしたCSF-1R阻害剤(PLX3397)を用いてTAMの活性を抑制し、抗腫瘍効果と顎骨浸潤・破壊の抑制効果について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vitro の実験で、PTHrP mRNA ,COX-2 mRNA発現量の異なる2種類のマウス扁平上皮癌(NR-S1細胞株,SCCⅦ細胞株)を用いてC3H/Heマウスにおいて顎骨浸潤モデルを作製した。PTHrP mRNAの発現量は NR-S1細胞株がSCCⅦ細胞株の約3倍、COX-2 mRNAの発現量はSCCⅦ細胞株がNR-S1細胞株の約2倍であった。その後はin vivoの実験で、C3H/Heマウスにおいて顎骨浸潤モデルを作製し、異なる2種類のマウス扁平上皮癌株(SCCⅦ、NR-S1)で腫瘍増殖や顎骨浸潤能の違いについて比較検討した。顎骨はマイクロCTによる3次元的形態計測を行った後、通法に従い固定、脱灰し、パラフィン包埋あるいは非脱灰標本を作製した。その後、H-E染色による病理組織学的および免疫病理組織学的検討を行った。また、非脱灰病理切片にて、骨芽細胞や破骨細胞の発現様式を検討するためにALP染色,TRAP染色を行った。現在、TAM やCSF-1/CSF-1Rシグナルの顎骨浸潤部における局在性や腫瘍細胞との関連性を明らかにするため、特異マーカーであるCD163 やCSF-1R(CD155)の発現を免疫組織化学的に検索する予定であったが、免疫組織化学的染色に難渋した。in situ hybridizationに進むことができず、研究進捗に遅れをきたしている。順調に進めば、本年度はCSF-1/CSF-1Rシグナルによる前破骨細胞から成熟破骨細胞への分化誘導能についても、Real-time PCRとTRAP染色により、シグナル発現強度と成熟破骨細胞の数的評価によりその相関関係を分析し、扁平上皮癌の顎骨浸潤部におけるCSF-1/CSF-1Rシグナルの腫瘍浸潤・増殖への作用機序を解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
再現性のあるマウスの顎骨浸潤モデルの作製方法は確立しており、この顎骨浸潤モデルを用いてCSF-1/CSF-1RシグナルをターゲットにCSF-1R阻害剤(PLX3397)を用いてTAMの活性を抑制し、抗腫瘍効果と顎骨浸潤・破壊の抑制効果について検討する。①CSF-1R阻害剤の抗腫瘍効果の解析:CSF-1R阻害剤(PLX3397)投与群とControl群の経時的腫瘍体積を比較検討し、また2群間の経時的体重変化や生存期間も検討する。②CSF-1R阻害剤のTAM活性抑制効果および血管新生抑制効果の解析:前年度から引き続きTAMの評価をマウス顎骨浸潤モデルにて行う。特異マーカーであるF4/80およびCD163および CSF-1R(CD155)の発現を免疫組織化学染色法およびin situ hybridization法の確立を目指す。その後、CSF-1R阻害剤(PLX3397)投与群とControl群とのTAMの局在性や発現強度について比較検討する。血管新生については、微小血管密度(Micro Vessel Density:MVD)を評価し、CD31の免疫組織化学染色を行い腫瘍周囲および顎骨浸潤部周囲でのMVDを計測し2群間を比較検討する。③CSF-1R阻害剤の前破骨細胞活性抑制効果の解析:CSF-1R阻害剤(PLX3397)投与による前破骨細胞から成熟破骨細胞への分化誘導抑制効果について、シグナル発現強度をReal-time PCRで定量化し、またTRAP染色で破骨細胞数を計測し、相関関係を検討する。また、顎骨浸潤度についてはμCTを用いて3次元的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス顎骨浸潤モデルにて、顎骨浸潤部におけるTAM発現とその局在およびCSF-1/CSF-1Rシグナルについて、形態学的評価や分子病理学的評価を行う予定であった。TAM やCSF-1/CSF-1Rシグナルの特異マーカーであるCD163 やCSF-1R(CD155)の免疫組織化学的に検索に難渋した。現在、抗体を替え、免疫組織化学的染色を行い、局在や腫瘍細胞との関連性を検索中である。また、顎骨浸潤部におけるVEGFおよびreceptor activator for nuclear factor-κB ligand (RANKL)、 osteoprotegerin(OPG)、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)、CSF-1発現等についてReal-time PCRを用いて、mRNAの定性・定量分析に到達しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
TAM やCSF-1/CSF-1Rシグナルの特異マーカーであるCD163 やCSF-1R(CD155)の免疫組織化学的検索を行う予定である。その後、顎骨浸潤部におけるVEGFおよびRANKL、OPG、GAPDH、CSF-1発現等についてReal-time PCRを用いて、mRNAの定性・定量分析を行う。その後、顎骨浸潤モデルでCSF-1R阻害剤(PLX3397)投与実験を行う。経時的な腫瘍サイズと体重測定を行い、顎骨浸潤部における腫瘍関連マクロファージを病理組織化学的に検索する。腫瘍関連マクロファージの評価は、詳細な局在性を明らかにするため、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察する予定である。CSF-1発現強度やCSF-1/CSF-1RシグナルによるTAMの活性化を検討する。また、VEGFおよびRANKL、OPG、GAPDHのmRNAをReal-time PCRを用いて分析する予定である。
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