研究課題/領域番号 |
26463026
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小倉 直美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10152448)
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研究分担者 |
伊藤 耕 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (20419758)
高橋 康輔 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (30705687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯嚢由来細胞 / RNA結合タンパク質 / microRNA / AGO2 / RIP-Chip |
研究実績の概要 |
近年,miRNAやRNA結合タンパク質がmRNAの非翻訳領域に結合することでも,mRNAの安定性や翻訳が制御されていることが明らかとなった.本申請では,免疫沈降法を利用したRIP-Chip法を用いて,歯嚢由来細胞(歯嚢細胞)の石灰化に関与するmicroRNA-mRNAまたは結合タンパク質―mRNAを検索する.今年度は,歯嚢細胞で発現しているRNA結合タンパク質の検索を行うとともに,骨芽細胞分化に関与するmiR-204を歯嚢細胞に遺伝子導入し,RIP-Chipを行った.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,埋伏歯抜歯の際に歯嚢を採取し,collagenase/dispase酵素処理を行い, 歯嚢細胞を得た.歯嚢細胞を骨芽細胞誘導培地で培養し,miRNeasy Mini kitを用いてtotal RNAを抽出し,DNA microarray解析を行った.また,miR-204を遺伝子導入した歯嚢細胞および導入していない歯嚢細胞を骨芽細胞誘導培地で培養して細胞を可溶化後,AGO2抗体で免疫沈降してRIP-Chip Assayを行った.【結果および考察】DNA Microarray解析から,歯嚢細胞では,IGF2BP1~3, STAV1, 2, HuR, Musashi-1などのRNA結合タンパク質が発現していた.歯嚢細胞の石灰化過程でIGF2遺伝子発現は著しい上昇を認める.よって,IGF2BPも歯嚢細胞の骨芽細胞分化・石灰化過程に関与している可能性が示唆される.一方,培養7日目にmiR-204を遺伝子導入した細胞および遺伝子導入しない細胞でRIP-Chip Assayを行ったところ,miR-204を遺伝子導入した系では145.6 ng, 遺伝子導入していない系では65.7 ngのRNAを得た.miR-204を導入することによってAGO2結合RNA量が増加することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数十名の埋伏歯の抜歯の患者から歯嚢を採取し,歯嚢由来細胞(歯嚢細胞)の分離・培養後しており,実験に使用可能な歯嚢細胞の例数は増えている. 今年度は,骨代謝に関与していると報告されているRNA結合タンパク質について文献的に検索を行った.また,歯嚢細胞で発現しているRNA結合タンパク質を,DNA microarray解析によって検索した. 一方,歯嚢細胞の骨芽細胞分化・石灰化過程でmicroRNA Microarray解析を行い,miR-204発現が骨芽細胞分化・石灰化過程で著しく発現減少していることを認めた.miR-204は骨芽細胞・石灰化に関与するmRNAを標的にしている可能性が示唆される.そこで,miR-204の標的遺伝子を検索することを目的に,miR-204を遺伝子導入した歯嚢細胞および遺伝子導入しない歯嚢細胞について,AGO2抗体で免疫沈降を行うRIP-Chip Assayを行った.RIP-Chip assayによって分離されたmRNAを用いて遺伝子発現解析も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
歯嚢細胞の骨芽細胞分化・石灰化に関与するRNA結合タンパク質とそのRNA結合タンパク質が結合するmRNAを検索することを目的に,歯嚢細胞を骨芽細胞分化誘導培地または増殖培地で培養して細胞を可溶化後,IGF2BP抗体を用いてRIP-Chip Assayを行い,分離されたmRNAの同定を行う.また,培養日数の異なった歯嚢細胞についてRIP-Chip Assayを行い,経時的な変化も検討する.さらに,IGF2BP以外のRNA結合タンパク質についても同様の実験を行う. AGO2抗体で免疫沈降するRIP-Chip Assayについては,miR-204遺伝子導入後経時的に行う.さらに,骨芽細胞分化・石灰化過程で発現変動したmiR-204以外のmicroRNAについても,歯嚢細胞に遺伝子導入してRIP-Chip Assayを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入試薬が確定していなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
real time-PCR法などの遺伝子発現測定用試薬の購入に使用する.
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